2019 Fiscal Year Research-status Report
Preparation of Novel Materials from Chitin using Ionic Liquid
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18K05239
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
山元 和哉 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (40347084)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
門川 淳一 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (30241722)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | キチン / ヒドロゲル / イオン液体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、N-アセチル-D-グルコサミンがβ(1→4)-グリコシド結合で直鎖状に繋がった天然多糖であるキチンの材料化を目的としている。 初年度(平成30年度)までに、当研究グループで見出した自己組織化キチンナノファイバーを主鎖成分として分岐状構造物の調製を行った。まず還元アミノ化を行うために、アルカリ処理により部分脱アセチル化(PDA)キチンナノファイバーを調製し、分岐鎖成分としてはキチンオリゴマー(市販品)を用いた。PDAキチンのアミノ基に対して所定量のキチンオリゴマーを酢酸水溶液に溶解させ、PDAキチンナノファイバーを超音波処理により分散し、その後、還元剤を添加して所定時間反応させた結果、反応時間が経過するにつれて反応溶液中にゲル状の凝集物が形成されることが確認された。本年度は、初年度で得られた調製条件を参考に、アミノ基に反応させる分岐鎖成分として、種々の単糖および二糖の糖を用い、キチン誘導体の調製および反応液中での形態評価や構造化について検討した。様々な糖を用いて検討した結果、キシロース、グルコースとN-アセチル-D-グルコサミンにおいて、反応時間の経過に伴い反応溶液中にヒドロゲルの形成が確認された。洗浄・乾燥後の回収物のNMRおよびXRDの結果より、キチンナノファイバーへの糖の修飾およびキチンの結晶性が維持されていることが確認された。また、SEM観察より、ナノレベルで網目状に絡み合った形態も観察された。さらに、乾燥後のサンプルに水を添加したところ再膨潤し、再ゲル化することも確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度(平成30年度)までに、自己組織化キチンナノファイバーをアルカリ処理により部分脱アセチル化したPDAキチンナノファイバーとキチンオリゴマーを還元アミノ化反応により修飾させて分岐状構造物の調製を行った。本年度は、初年度で得られた調製条件をもとに、アミノ基と反応させる分岐鎖成分として、キシロース、ガラクトース、グルコース、N-アセチル-D-グルコサミンなどの種々の単糖および二糖の糖を用い、反応液中での形態変化、再生キチンの構造化について検討した。まず還元アミノ化を行うために、アルカリ処理によりPDAキチンナノファイバーを調製し、その分散状態を詳細に評価したところ、処理前の自己組織化キチンナノファイバーよりも細いナノファイバーに解繊したスケールダウンキチンナノファイバーが観察された。PDAキチンナノファイバー(脱アセチル化度:23%)に対して50等量のキシロースおよび還元剤を添加して還元アミノ化反応を行ったところ、反応時間の経過に伴い反応溶液中にヒドロゲルが形成した。この生成物のプロトンNMR測定により、キチン由来のシグナルに加えて、キシロースのメチレンプロトン由来のシグナルが観測された(導入率15%程度)。また、凍結乾燥後のサンプルのSEM観察より、ナノレベルで網目状に絡み合った形態も観察された。XRD測定の結果より、PDAキチンと同様に、キチンの結晶構造に由来するピークが確認されたことから、結晶性を維持していることも確認された。さらに、凍結乾燥後のサンプルに水を添加したところ再膨潤した。動的粘弾性測定結果から、貯蔵弾性率が損失弾性率を上回っていたことから再ゲル化していることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、キチンを良好に溶解するイオン液体の臭化1-アリル-3-メチルイミダゾリウム(AMIMBr)を見出しており、さらにキチンイオンゲルをメタノールに浸漬させることでキチンが自己組織化的にナノファイバーとして再生し、ろ過によりナノファイバーが集積したフィルムが得られることを報告している。本課題においては、キチンを主成分とした非天然型の分岐型多糖を調製し、さらにキシロースやN-アセチル-D-グルコサミンなどの単糖を還元アミノ反応により修飾した場合でも、ヒドロゲルが得られることを明らかとしている。さらにアルカリ処理によるPDAキチンナノファイバーの分散状態を評価したところ、処理前の自己組織化キチンナノファイバーよりも細いナノファイバーに解繊したスケールダウンキチンナノファイバーを確認している。これらより、静電反発によりバンドル構造がほぐれ、この解繊したスケールダウンキチンナノファイバーの表面アミノ基に糖が修飾することで静電反発が抑制され、不規則的にナノファイバーが配列・集積することでヒドロゲルを形成すると考えている。最終年度は、種々の糖鎖を修飾したキチンナノファイバーの構造化のドライビングフォースとして考えられる水素結合形成を促進もしくは抑制することで多様なキチン構造体の創製を検討する。さらに、AMIMBrなどのイオン液体やそのほかの溶媒への溶解性・分散性を用いて、キチンナノ素材を支持体もしくは強化剤として活用した天然多糖や合成高分子との簡便な複合化による機能性や物性に優れた材料創製を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染の感染拡大の防止として、3月22日(日)から25日(水)まで開催が予定されていた第100春季年会(東京理科大学野田キャンパス)が中止となり旅費の出費がなくなったため、59,935円が使用できませんでした。 2020年度の学会発表の予算として計画します。
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