2019 Fiscal Year Research-status Report
軟骨組織再生のためのセルロースナノファイバー傾斜構造材料の創製
Project/Area Number |
18K05249
|
Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
吉川 千晶 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主任研究員 (10447930)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榊原 圭太 京都大学, 化学研究所, 助教 (20618649)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | セルロースナノファイバー / 再生医療 / 軟骨組織再生 / 傾斜階層構造 / 間葉系幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題ではポリマーブラシを付与したセルロースナノファイバーを用い、力学特性・生理活性が傾斜した、軟骨組織再生のための高次構造材料の創製を進めている。本年度は研究実施計画に従い、1)セルロースナノファイバーへの各種ポリマーブラシのグラフト、2)セルロースナノファイバーと間葉系幹細胞との高次構造化、3)軟骨分化前後における高次構造体の力学特性・生理活性の評価を行った。 まず、セルロースナノファイバーへグラフトしたポリマーブラシの化学特性・構造特性を系統的に変え、間葉系幹細胞と効率よく高次構造化するための条件検討を行ったところ、ポリマーブラシの化学組成やグラフト密度、セルロースナノファイバーの濃度に依存して、間葉系幹細胞が特異な高次構造体を形成することが確認できた。また、軟骨分化誘導前後でその高次構造が大きく変化するという、予想していなかった、興味深い結果を得た。更に、得られる高次構造体の力学特性(ヤング率)を原子間力顕微鏡で測定したところ、構造によってヤング率が異なること、また、その数値がいずれの場合も生体軟骨(文献値)と同程度であることが確認できた。次に、定量PCR法により軟骨マーカー遺伝子の発現量を定量したところ、高次構造に依存して発現量(軟骨分化の程度)が異なることが明らかとなった。また、セルロースナノファイバーを用いた培養の方が、市販のゲルなどに比べて軟骨分化が促進されることも示された。これらの結果は、軟骨再生において、足場材料(セルロースナノファイバー)の生理活性・力学特性・構造特性が重要であることを示唆する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績計画に従って成果が得られていることから、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和2年度の研究実施計画に従い、軟骨組織再生に向けた高次構造材料の創製を行う。これまでに得た知見を元に、セルロースナノファイバーやグラフトポリマーの化学特性・構造特性を変え、間葉系幹細胞とセルロースナノファイバーが形成する各高次構造のヤング率を生体軟骨組織(表面層・中間層・深層)と同程度に調整する。定量PCR法により軟骨マーカー遺伝子の発現量を調べるとともに、共焦点顕微鏡観察や凍結切片法を用いた組織染色により、高次構造体内部のより詳細な評価を進め、軟骨組織に倣った、構造特性の傾斜化や力学特性・生理活性の制御を行う。更に、各構造体を積層化させ、生理活性・力学特性がマクロスケールで傾斜した高次構造体の作成を試みる。得られる結果を統合し、軟骨再生における力学特性・生理活性・構造特性の不均一性の生理的意義について検討する。
|
Causes of Carryover |
昨年度に続き、共同研究先のオーストラリアCSIROからペプチド・ペプチド担持モノマーを提供してもらったため、予定していた合成試薬代を下回った。また、参加を予定していた国内外の学会が延期または中止となったため、学会参加費の一部が不要となった。以上のことから、次年度使用額が生じた。それら令和元年度分の繰越金は、次年度分と合わせてバイオ実験に必要な試薬や物品の購入、学会参加費・旅費、論文2報分の投稿費用(英文校正料、投稿料)として使用する。
|