2020 Fiscal Year Annual Research Report
Realization of multiferroics by mesopore-induced lattice distortion and spin-phonon coupling
Project/Area Number |
18K05279
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
鈴木 孝宗 東京理科大学, 研究推進機構総合研究院, 講師 (10595888)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 多孔体 / チタン酸ユウロピウム / 歪み / ゾルーゲル法 / マルチフェロイック |
Outline of Annual Research Achievements |
チタン酸ユウロピウム(EuTiO3)はバルクでは常誘電体かつ反強磁性体であるが、結晶格子歪みを導入することで強誘電性と強磁性が共存するマルチフェロイック物質となることが知られている。本研究課題では、両親媒性活性界面剤ミセルが作り出す有機鋳型とゾルゲル反応を組み合わせた化学的手法を用いて多孔性薄膜を作製し、細孔が誘起する結晶格子歪みによりチタン酸ユウロピウムのマルチフェロイック化を目指した。 走査電子顕微鏡による形態観測および薄膜X線回折測定から、ナノ細孔およびEuTiO3に結晶化された細孔骨格の存在を確認した。また、高解像度の透過電子顕微鏡像から、細孔骨格はアモルファス化した部分が結晶化したコアの周りを覆うコアシェル構造をしていることが判明した。結晶化したコア部分についてFast Fourier Transform Mapping法による結晶歪み解析を行い、マルチフェロイック化に必要な結晶格子歪みが十分にもたらされていることを明らかにした。一方、X線光電子分光測定の結果からアモルファス化した部分については、Euが磁性イオンであるEu2+から非磁性のEu3+に酸化された他、酸素空孔が導入されたと考えられた。 作製した多孔性薄膜の磁化率測定を行ったところ、反強磁性であるバルクとは異なり強磁性的振る舞いを示した。これは細孔骨格のコア部分における結晶格子歪みの他、アモルファス部分に起因するとも考えられる。先行研究により、酸素欠陥がもたらす余剰電子とEu2+のスピンとの間に働く相互作用が、強磁性をもたらすことが知られているためである。一方、上記余剰電子の金属的振る舞いによりリーク電流が発生したことから、誘電率の測定には至らなかった。現段階では多孔体化によるマルチフェロイック化の成否について判断が付かなかったため、今後も研究を継続していきたい。
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