2018 Fiscal Year Research-status Report
Hole-tansfer type plasmonic photocatalyst for solar hydrogen peroxide generation
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18K05280
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
納谷 真一 近畿大学, 有害物質処理室, 技術職員 (20329113)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | プラズモニック光触媒 / 金ナノ粒子 / 光触媒による水の分解 / ホットホール移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
プラズモニック光触媒における金ナノ粒子の担体として、p型半導体の中から水を酸化することの出来る価電子帯上端を有する酸化ニッケルを選定し、尿素を中和剤に用いた析出沈殿法により金ナノ粒子を担持した。透過型電子顕微鏡(TEM)観察により、比較的均一にサイズ制御された金ナノ粒子が酸化ニッケル表面に担持されており、高分解能TEMから、金ナノ粒子と酸化ニッケルの間に非常に良好な接合を有していることが明らかとなった。X線高電子分光法で測定したAuの4f軌道のスペクトルは、金属状態の金が担持されていることを示しているが、金ナノ粒子担持酸化チタンなどのn型半導体に担持したものと比べ、高エネルギー側にピークが表れており、特徴的な性質を示した。拡散反射法で測定した紫外可視近赤外吸収スペクトルでは、金ナノ粒子の担持により600 nm付近にピークを持つブロードな局在表面プラズモン吸収を示した。 金ナノ粒子担持酸化ニッケルを純水に分散し、アルゴン脱気後、赤色光(640 nm)を照射したところ、光照射時間に比例して水素が生成することが明らかとなった。暗所および金ナノ粒子を担持していない酸化ニッケルに光照射を行っても、有意な量の水素は生成しない。これは、金ナノ粒子担持酸化ニッケルの光触媒作用により水の分解が進行していることを強く示唆している。 設備備品費により導入した電気化学測定システムにより、光電気化学測定を行った。良く知られているように、n型半導体である酸化チタンに金ナノ粒子を担持した電極では、光照射に伴って、酸化電流が流れることが確認された。一方、非常に興味深いことに、金ナノ粒子担持酸化ニッケル電極に赤色光を照射すると、逆向きの還元電流が流れることが明らかとなった。これは、上記の光触媒作用による水の分解が金ナノ粒子から酸化ニッケルへのホットホール移動によって駆動することを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過酸化水素合成はまだ達成できていないが、金ナノ粒子担持酸化ニッケルへの赤色光の照射により水素が生成しており、大きな目標の一つである「正孔移動型のプラズモニック光触媒」の可能性を強く示す結果が得られている。さらに、本触媒反応で得られる水素と酸素を用いることで、熱触媒により過酸化水素を合成することが出来るため、間接的にはソーラー過酸化水素合成が達成されている。
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Strategy for Future Research Activity |
太陽光による水の分解で水素と酸素をクリーンに合成することが出来れば、近年活発に研究されている熱触媒反応により過酸化水素が得られるため、目的であるソーラー過酸化水素合成が達成されることになる。そこで、まずは水の分解反応を推進する。作動メカニズムを明らかにするため、微粒子系及び電極系におけるアクションスペクトル解析を行う。続いて、金ナノ粒子のサイズ効果を検討する。電子移動型プラズモニック光触媒では、金ナノ粒子のサイズがその活性に大きな影響を与えることを明らかにしており、正孔移動型におけるサイズ効果も非常に重要な課題である。さらに、担体についても様々なp型半導体を検討し、その影響を明らかにする。 さらに、正孔移動型プラズモニック光触媒による過酸化水素の直接合成を達成するため検討を進めて行く。また、光触媒による過酸化水素合成では、生成した過酸化水素の分解を抑制することが重要である。そこで、本触媒による過酸化水素分解についても検討してゆく。
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Causes of Carryover |
触媒の合成や反応が比較的期待通りスムーズに進んだため、試薬等の購入が抑えられた。 次年度は、次年度使用額を加えた助成金を使用し、さらに研究を加速する。
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Research Products
(18 results)