2018 Fiscal Year Research-status Report
核形成・核成長反応制御に基づく金属イオンドープ高分子上でのMOF連続膜形成
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18K05281
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
鶴岡 孝章 甲南大学, フロンティアサイエンス学部, 准教授 (20550239)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 金属有機構造体 / 薄膜 / 界面合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、金属イオンをドープした高分子フィルムを金属有機構造体(Metal-Organic Frameworks: MOFs)結晶膜を作製する前駆体かつ支持基板として利用し、MOFsの核形成ならびに核成長の速度を制御することによりMOF連続膜を形成する手法の開発を目的としている。 平成30年度では、核形成・核成長速度を制御するための第一歩として、フィルム上でのMOFs形成過程をSEMにて観察することで、その形成メカニズムの解析を行った。まずは本手法においてMOFs形成のトリガーである高分子フィルムからの金属イオン溶出速度に着目し、有機リガンド濃度とMOFs成長速度の相関について検討したところ、有機リガンド濃度の増大に伴い金属イオン溶出速度が増大し、反応初期過程においてフィルム上での優先的な核形成が生じることが明らかとなった。この反応初期過程における核形成速度が最終的に得られるMOFs膜の形態に大きく影響しており、核形成速度が遅い系においては、非常に大きなサイズのMOF結晶が疎な状態にて形成する。一方、核形成速度が速い系では、小さなサイズのMOF結晶が密に形成し、連続膜を形成することが分かった。(Manuscrpit in preparation) 一般的なMOFsはカルボン酸リガンドによって構築されているが、アミン系リガンドによって構築されるMOFsもあり、本手法ではリガンドのプロトンと高分子ドープした金属イオン間のイオン交換反応がMOFs形成のトリガーであるため、アミン系リガンドMOFsの形成が困難であった。これを解決するため、MOFs形成に寄与しないNaイオンを用いた高分子ドープ金属イオン溶出に基づくアミン系リガンドMOFsの形成を試みた。その結果、ZIF-8というMOFsの連続膜を形成することに成功した。(Manuscript in preparation)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は3つの課題に分類されており、平成30年度の課題である本手法におけるMOFsの核形成・核成長速度の解析に関して取り組み、核形成速度を制御する主要因子を明らかにしている。また、平成31年度の課題として掲げているMOF連続膜形成に関しても2種類のMOFに対してであるが、形成することに成功している。現在得られている結果より研究の進捗状況としては計画以上に少し進捗していると考えられるが、いずれの成果に関しても論文作成段階であるため、「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は課題(2)のMOF連続膜形成についての検討を中心に遂行しているが、一般的な結晶膜形成と同様で反応初期段階にて如何に多くの核を形成し、その後成長プロセスへ移行させるかが課題である。つまり、核形成と核成長プロセスの分離が重要となっている。アミン系リガンドMOFに関しては、核形成プロセスの鍵となる金属イオン溶出を添加したNaイオンに担わせるため、金属イオン溶出と錯形成を完全に分離可能であり、比較的容易に連続膜形成が可能であることが分かっており、Naイオン濃度、有機リガンド濃度、反応温度などを調節することで、より詳細な結果を得ていく予定である。 一方、カルボン酸リガンドMOFに関しては、カルボン酸リガンドが金属イオン溶出と錯形成の両反応を担う因子であるため、プロセスの独立制御が困難である。ただ、シンプルに考えると、カルボン酸リガンドの増大により金属イオン溶出速度ならびに錯形成速度が速くなるため反応初期段階において優先的な核形成を誘起することが可能である。現在は、その後の成長過程を誘起する条件について反応温度や反応時間に着目しており、今後詳細な検討を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
当初の実験計画においては、成長解析のターゲット材料の選定に苦難すると予想しており、様々なMOFsにおいて成長解析ならびに結晶膜形成を行う予定であった。しかしながら、実際には中心に検討を進める材料の選定がスムーズに進行したため、当初計画していた予算が若干ではあるが、繰り越し予算として本年度に計上することとなった。 本年度においては、連続膜形成を中心に遂行する予定であるが、どのようなMOFsにおいては連続膜形成が可能なのかといった汎用的な部分に関して取り組む予定であり、様々な試薬を要するためそちらの購入予算に充てる。
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Research Products
(12 results)