2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K05286
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
木嶋 倫人 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (50356870)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | マイクロ波 / ナノ酸化物 / コーティング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終ゴールは、マイクロ波の選択加熱効果を用いて、プラスチック等の低融点基板にダメージを与えずに酸化物層をコーティングする技術を確立し、様々なエネルギー・環境材料、電子デバイス材料等に応用することである。酸化物ナノ材料とマイクロ波照射によりナノ粒子が析出可能な金属原料溶液とからなるナノ材料含有コーティング溶液を調製し、これを基板上に塗工後、マイクロ波を照射することにより、低温成膜を行う計画である。本年度は、コーティング溶液に含有させる各種酸化物ナノ材料の合成を中心に研究を行った。具体的には、液相マイクロ波合成法(マイクロ波加熱を用いた液相合成法)、水熱合成法、ソルボサーマル法、ソフト化学法を用いて、サーモクロミック材料であるバナジウム酸化物、透明導電体材料であるITO(Tin-doped In2O3)、二次電池負極材料である酸化鉄、酸化スズ、酸化チタンの合成実験を行った。 バナジウム酸化物の合成では、斜方晶のルチル型構造を有する粒子径約100 nmのVO2ナノ結晶を液相中で一段合成することに成功した。示差走査熱量分析により約65℃(onset)で光学特性の変化を伴う構造相転移を示すことを明らかにした。ITOの液相マイクロ波合成では、従来法(ソルボサーマル法)に比べ短時間で単相のITOナノ結晶が合成できることが明らかになった。生成物は、マイクロ波照射時間、反応温度、原料溶媒に強く依存し、球状、キューブ状、ロッド状の形状を有するナノ結晶が合成可能であった。二次電池負極材料の合成では、ソフト化学法によりチタニア・ナノシートの合成を行い、液相マイクロ波合成法で酸化鉄と酸化スズのナノ複合体の合成を行った。これらの電池材料について電気化学特性の評価を行ったところ、従来材料に比べ優れたサイクル特性を示すことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画は、コーティング溶液に含有させる各種酸化物ナノ材料の合成を行うことであった。サーモクロミック材料、透明導電体材料、二次電池負極材料として応用可能な各種ナノ材料の合成実験を行ったが、今後、知財化につながる合成結果が得られており、いくつかのナノ材料については、特性評価を行うことにより、学会発表および誌上発表につながる成果が得られた。おおむね当初の計画通り研究は進捗しており、次年度に予定しているナノ材料含有コーティング溶液の調製および薄膜化の実験が開始できる見通しが立った。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の計画は、今年度合成した各種ナノ材料を含有したコーティング溶液を調製し、薄膜化の実験を行うことである。次年度前半は、ナノ材料含有コーティング溶液の調製に注力し、ガラス基板上へのスピンコートと通常加熱による薄膜化を検討する。良好な結果が得られれば、薄膜の特性評価を行い、マイクロ波加熱実験へと展開する。また、いくつかのナノ材料については、追加の合成実験および物性・構造評価を行い、知財化と報文化を目指す。
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Causes of Carryover |
予算の制約により備品の購入計画を変更したため、次年度使用額が発生した。次年度使用額は、翌年の助成金と合わせて主に備品購入費に充当する予定である。
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