2018 Fiscal Year Research-status Report
暗所でも同一の酸化還元反応を誘起する有機光触媒によるデュアルキャタリシスの開拓
Project/Area Number |
18K05287
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
阿部 敏之 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (20312481)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | デュアルキャタリシス / 有機半導体 / p-n接合体 / 酸化還元反応 / ダウンヒル反応 / 光触媒 / 酸化還元触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
デュアルキャタリシス(DC)は暗所下においても光照射下と同様に酸化還元反応を誘起する、本研究代表者が見いだしたオリジナルの触媒作用である。本年度は特に電子供与基を複数有するアミノ酸を被酸化物質として取り上げ、電気化学および触媒化学の観点からDCを検討した。 システインはカルボキシ基、アミノ基、そしてチオール基を有するアミノ酸である。ペリレン誘導体(PTCBI)/コバルトフタロシアニン(CoPc)系有機p-n接合体は塩基性条件(pH10)、かつ、暗所下でシステインの酸化を誘起したとともに、可視光照射下ではその活性が一層増大した。その際、いずれにおいても、水素が還元生成物として得られた。対照物質としてセリンを用いて、種々のコントロール実験を行った。セリンはシステイン中のチオール基がヒドロキシ基に置換されたアミノ酸である。pH6の条件、つまり、システインとセリンにそれぞれ含まれるカルボキシ基のプロトンが解離した条件では、光照射の有無に関係なく、酸化活性は全く見られなかった。また、セリン水溶液をpH8.5に調整して用いた場合(セリン中のアミノ基が1 mM程度で存在し、pH10におけるシステイン中のアミノ基濃度と同一)、光照射下で若干の酸化活性が見られたのみであった。さらに、システイン中のアミノ基が完全にプロトン化されていると考えられるpH8.7の水溶液中では、pH10ほどではなかったもののDC活性が見られた。以上のことから、PTCBI/CoPc系はシステイン中のチオレートイオンに対してDC活性を示すことが明らかとなった。このようなDC活性の発現はCoPc上に発生する2種類の酸化力(光照射下、価電子帯上端;暗所下、伝導帯下端)とPTCBIの伝導帯下端に発生する還元力に起因すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国際的学術誌上で1報公表し、オープンアクセス化も図った。また、学会発表も2件行った。
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Strategy for Future Research Activity |
デュアルキャタリシス(DC)は従来の光触媒作用に加えて、暗所下でも酸化還元反応に対して触媒として作用する新しい触媒機能である。このような従来には見られなかったDCついて、有機p-n接合体と対象物質の探索を基軸として, 今後も鋭意検討を進めていく.
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