2019 Fiscal Year Research-status Report
暗所でも同一の酸化還元反応を誘起する有機光触媒によるデュアルキャタリシスの開拓
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18K05287
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
阿部 敏之 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (20312481)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | デュアルキャタリシス / 有機p-n接合体 / 助触媒 / 亜酸化銅 / ギ酸酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ペリレン誘導体(PTCBI, n型)とコバルトフタロシアニン(CoPc, p型)からなる有機p-n接合体のギ酸酸化に対するデュアルキャタリシス活性を光電気化学的に調べた。PTCBI/CoPc系は光照射下でのみギ酸酸化に対する活性を示し、一方、暗所下ではギ酸酸化に対する触媒作用を発現しなかった。そのため、CoPc表面に助触媒として亜酸化銅(Cu2O)を担持した系(PTCBI/CoPc/Cu2O)でギ酸酸化を検討した。PTCBI/CoPc/Cu2O系では、Cu2O未担持の場合と比べて、光照射下でのギ酸酸化が促進され、さらに、暗所下でもギ酸の酸化が誘起された。光照射下では、有機p-n接合体内部でキャリアが発生し、正孔キャリアがCoPcおよびCu2Oの価電子帯をそれぞれ伝導するため、Cu2O表面上でギ酸が酸化される。Cu2Oはギ酸酸化に対する光触媒としても知られていることから、上記は理に叶った結果である。一方、ギ酸の酸化電位とCu2Oの伝導帯下端の位置を踏まえると、暗所下ではCu2O上でのギ酸酸化は熱力学的に困難と考えられた。そのため、暗所下での反応後のCu2OについてXRDパターンを測定したところ、Cuの形成が認められた。ギ酸が還元剤として作用することにより, Cu2OからCuの生成が起こり、そのCuが暗所下のギ酸酸化に対する触媒として作用したと考察された。暗所下の反応においても有機p-n接合体の適用はギ酸から放出された電子の輸送の点で不可欠であることも明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有機p-n接合体をベースとして、さらに助触媒を組み合わせる方法で、全く新しいタイプのデュアルキャタリシスの例を示すことができた。また、今回取り上げた助触媒は、特に暗所下においてin situで触媒活性種を生じ、学術的にも将来の産業応用の点でも興味深い成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
有機p-n接合体によるデュアルキャタリシスがどのような物質に対して有効なのか、有機p-n接合体系材料の探索も含めて、引き続き、検討を進めたい。 また、有機p-n接合体への助触媒の結合による新しいタイプのデュアルキャタリシスを提示できたので、この知見も踏まえて研究を推進したい。
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