2019 Fiscal Year Research-status Report
界面電荷移動遷移を示すTiO2-TCNQ界面錯体の構造と光物性帰属の研究
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18K05289
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
城野 亮太 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任助教 (10586936)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 界面電荷移動遷移 / 光誘起電子移動反応 / 計算科学 / 酸化チタン / ジシアノメチレン化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度見出した低濃度TCNQアセトニトリル溶液条件に対応する計算モデルTi38O80H10-O-C12H4N4(Ti38-TCNQ)を基本構造として,高濃度TCNQアセトニトリル溶液条件を想定したTi38O80H10-O-C12H4N4..C12H4N4(Ti38-TCNQ..TCNQ)の構造最適化を行った.Ti38-TCNQ..TCNQのCN伸縮振動はTi38-TCNQの振動スペクトルに重なるように現れた.実験的にもこれまでに報告したCN伸縮振動の赤外吸収はTCNQアセトニトリル溶液の濃度を薄くするに連れ吸収の線幅が減少し,実は2つの吸収が重なっていたことがわかり,作成したモデルが実験をよく表現できていると判断した.
Ti38-TCNQのTCNQ部分と新しく導入したTCNQ分子はvan der Waals相互作用によって弱く物理吸着しており,その距離に応じてわずかに基底状態電子移動が起きた結果,新しく導入したTCNQの分子内遷移に由来する非常に強い吸収が可視光領域に現れることがわかった.結果として実験で観測した高濃度条件の透過吸収スペクトルとよく一致する形状を示した.
一方でこの遷移は物理吸着しているTCNQ分子内で起きる遷移であり,その励起エネルギーは酸化チタンに電子注入したときのエネルギー準位よりも低いため,この吸収を用いた電荷分離は起きないと考えた.実際TCNQアセトニトリル溶液の低濃度条件と高濃度条件で作成した電気化学セルでは外部量子効率のスペクトル形状が変わらず,高濃度条件で新しく現れたTCNQ分子内遷移が光電変換に寄与していないことを実験的に確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高濃度条件に対応するTi38-TCNQ..TCNQモデルの構造最適化を終え,励起状態計算・振動数計算から実験とよく一致し現象を説明できる結果を得た. 当初予定していたスケジュールどおりに進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
他のジシアノメチレン化合物やアナタース以外の酸化チタンを用いた実験を行うことで,1ステップで電荷分離状態に達する界面電荷移動遷移の応用を検討する.
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