2019 Fiscal Year Research-status Report
有機電解液における金属Mgの電気化学的析出溶解反応に関する基礎研究
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18K05293
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
嵯峨根 史洋 静岡大学, 工学部, 講師 (70443538)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | マグネシウム金属 / 添加剤 / 挿入脱離反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度においては、(1)金属マグネシウムの析出溶解挙動におけるMg(BH4)2の添加効果について検討を行った。また、マグネシウムの新たな電気化学系への展開として、(2)黒鉛電極へのマグネシウムイオンの電気化学的挿入脱離挙動を検討した。
(1)として、Mg基板を作用極とした場合、Mg(BH4)2を電解液に加えると析出溶解の過電圧の低減及びクーロン効率の大幅な改善が認められた。この要因を明らかにするため、Mgの溶解挙動を光学顕微鏡で”その場”観察したところ、Mg(BH4)2を含んだ電解液系でのみ、Mg表面から黒色の微粉末が流れ落ちる挙動が確認された。Mg表面は不活性雰囲気中であっても、残留するわずかな大気成分と反応してMg(OH)2やMgCO3を形成している。”その場”観察で認められた黒色物は、これらの被膜成分がMg(BH4)2の添加によって還元分解されたものと考えられる。 一方、電位掃引によるMg溶解の”その場”観察では、上記の黒色物およびMg溶解挙動は0.8V(vs.Mg2+/Mg)程度で進行が停止し、酸化電流が認められなくなった。これはMg表面が新たな被膜を形成して不導体化したことを示している。電解液に用いているMg(N(CF3SO2)2)2はMg金属と反応して抵抗被膜を形成することが知られていることより、この不導体化はMg塩との反応によるものと考えられる。すなわち、Mg(BH4)2によって分解される被膜はMg(OH)2などの大気成分によるものであり、電解液中のMg塩との反応による被膜成分を分解する効果は得られないことが明らかとなった。
(2)黒鉛へのマグネシウムイオンの挿入脱離を試みたところ、走査速度の速い測定でのみ、溶媒との共挿入に起因される可逆的な還元酸化電流が認められた。これより、安定な相関化合物を得るためには溶媒和構造との相関を理解する必要があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主たるアプローチである、Mg金属の析出溶解挙動を”その場”観察することを実現し、これによって被膜の溶解挙動を初めて可視化することに成功した。これを計画通り実現できたことは大きな進歩と言える。一方、不活性雰囲気を長時間保つことができておらず、析出溶解を長期間繰り返した際の”その場”観察は、現在のことろ困難であり、実験系のさらなる改善が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)金属マグネシウムの析出溶解挙動については、種々の添加剤を用いた”その場”観察を行い、これまで注目されていなかったMg溶解挙動を詳細に調べる。これまでの研究成果として、Mg溶解は均一に起こらず、不均一に孔を形成することが分かっているが、その原因を明らかにすべく、溶解部の表面分析を電子顕微鏡およびX線電子分光法によって行う。これらの結果と電気化学挙動との相関を基に、均一なMg析出溶解を得るための条件を明らかとする。
(2)黒鉛電極へのマグネシウムイオンの挿入脱離挙動については、種々の溶媒を用いて検討し、溶媒和構造と挿入の可否の相関を得る。また、カーボンナノチューブを用いてグラフェン層の間隔を制御し、安定な層間化合物を得るためのぞ輸件を明らかにする。
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Causes of Carryover |
研究に必要な試薬及び電気化学測定セルを購入予定であったが、別プロジェクト研究と共通のものが多かったため、本予算での購入頻度が減ったものであり、研究内容や進捗に影響はない。次年度は現在の”その場”観察系の改善を予定しており、今年度の未使用分と合わせて関連経費に利用する。
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Research Products
(3 results)