2018 Fiscal Year Research-status Report
太陽光による環境浄化を指向した混合原子価状態制御による高活性な光触媒材料の開発
Project/Area Number |
18K05298
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
山崎 鈴子 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (80202240)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 可視光応答型光触媒 / 金属イオンドープ / 電荷キャリア寿命 / 環境浄化 |
Outline of Annual Research Achievements |
白金イオンドープ酸化チタンと同等、あるいはそれ以上の活性を有する可視光応答型光触媒の開発を目指して、銅(II)イオン、バナジウム(III)イオンなどの様々な金属イオンをドープした酸化チタンを合成し、比表面積、結晶子サイズ、金属イオンドーパントの電子状態などの物性および光触媒活性を評価した。光触媒活性は、水中での4-クロロフェノールの分解や気相中でのアセトアルデヒド、トリクロロエチレンの分解において評価した。また、来年度以降、中空材料の作製過程において高温での処理が必要になることから、焼成温度の影響についても調べ、さらに、酸化チタンとグラフェンとの複合化のための水熱合成にも着手した。また、白金イオンドープ酸化チタンの光触媒活性が、X線光電子分光法で求めた酸化チタン表面における白金(II)と白金(IV)の比(Pt(II)/Pt(IV))の増加とともに増大した要因を明らかにするために、フェムト秒時間分解拡散反射スペクトルを測定した。その結果、Pt(II)/Pt(IV)値の増加とともに、可視光吸収により生じた電子の寿命が長くなることを明らかにした。これは、ドーパントが異なる原子価状態で共存することが、電子とホールの再結合を抑制し電荷分離効率を向上させるという我々の仮説を裏付ける結果である。また、様々な金属イオンをドープした酸化チタンを合成した結果、光照射によって黒、暗所放置によって退色する新規なフォトクロミック現象も発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
様々な条件で合成した白金イオンドープ酸化チタンの物性と光触媒活性の結果を比較したところ、白金イオンが複数の原子価状態をとり、Pt(II)/Pt(IV)値が大きいほど高活性になることを見出し、複数の原子価状態をとることで再結合が抑制されているとの仮説に基づいて、当初の研究計画を立てた。実際に、フェムト秒時間分解拡散反射スペクトルを測定し、電子寿命に関するデータを得たことで、我々の仮説が正しいことを証明することができた。電子寿命の変化は、可視光照射下での光電流測定によっても観察できるはずであると考え、電気化学的測定法の開発も並行して行っているため、当初の計画よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
様々な条件で作製した金属イオンドープ酸化チタン中のドーパントの原子価状態と光触媒活性、さらに電荷分離の促進を反映すると考えられる光電流測定を行うことで、高価な白金イオンを利用せず、太陽光照射下で作用する高活性な光触媒を見出す。その後、中空材料として加工し、水に浮遊する光触媒ペレットの開発へとつなげていく。
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Causes of Carryover |
電気炉の購入を次年度に回し、表面近傍の原子価状態のXPS測定を学内で行い、九州シンクロトロン光研究センターを利用しなかったため。来年度は、電気炉を購入し、中空材料開発に関する知見を得、さらに、バルク内部の原子価状態を測定するために、九州シンクロトロン光研究センターを利用する予定である。
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