2020 Fiscal Year Research-status Report
金属欠損を利用した層状酸化物の新たな高容量発現機構の解明
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18K05302
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
石田 直哉 東京理科大学, 理工学部先端化学科, 講師 (60712239)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | リチウムイオン電池正極材料 / 結晶構造解析 / 局所構造解析 / 層状岩塩型構造 / 放射光X線回折 / 中性子回折 / XAFS / 全散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題で実施した研究が、Journal of Solid State Electrochemistry誌にタイトルAverage and local structure analysis of Na/Li ion-exchanged Lix(Mn,Ni,Ti)O2 using synchrotron X-ray and neutron sourcesとして掲載された (25巻, 1319-1326ページ, 2021年)。本論文はNa/Liイオン交換体に遷移金属欠損が存在することを定量的に明らかにして、欠損を含めた結晶構造及び局所構造の解析に成功したが大きな成果である。特に、Lix(Mn,Ni,Ti)O2のリチウムイオン電池正極特性が高い起源を明らかにするために、解析された局所構造から構造情報を抽出した結果、Niの置換は局所構造を安定させる機能を示し、Tiの置換は遷移金属欠損を維持する機能があることが明らかとなった。したがって、これまでの研究によって得られた知見を総合すると、優れた正極特性を発揮する化学式はLiMn1-2yNiyTiyO2 (0.05 < y < 0.15)の範囲であることを明らかにすることに成功した。 一方、遷移金属欠損量を制御する研究はコロナ禍のため、SPring-8やJ-PARCなどの大型加速器施設の利用が十分に行えず進捗は限られた。対象とする正極材料は、Na化合物の合成の後にNa/Liイオン交換を実施するが、Na化合物の合成時にLiを導入することで遷移金属欠損濃度を向上する検討を行った。その結果、Liの導入と共に遷移金属欠損が増加することが判明し、充放電容量が向上することに成功した。しかし一方でサイクル特性が顕著に低下することも判明し、遷移金属組成と欠損量について更なる検討が必要であることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当課題に関して原著論文が1報受理されており、さらにそれに続く研究が進行して学会発表も行った段階であり研究の進捗は順調であると判断される。現在行っている研究内容は、新規組成の材料について合成が完了しており、合成された試料の分析と解析を進めている段階である。特に最も重要な三組成の試料については、SPirng-8とJ-PARCにおける実験もほとんど完了しており、放射光X線と中性子回折データを用いた結晶構造解析も計画通り進んでいる。さらに、全散乱測定データを用いた局所構造解析を行っており、一部コロナ禍により中性子全散乱データが不足しているため、今後測定が必要である。以上の解析の結果、新しい課題として遷移金属欠損量の最適量を検討する必要があり、充放電サイクル後の解析が今後必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
特性と構造の関係を解明するためには精密な局所構造の情報が必要であるため、中性子全散乱を測定して、局所構造の精密化を実施する。局所構造から、Mn, Ni, Tiと空孔近傍の八面体歪みを算出して、組成との関係を調査する。一方欠損量を増加させた結果サイクル特性が低いことが明らかとなったが、その原因を調査するために50サイクル充放電後の電極について放射光X線回折を実施して、リートベルト解析を実施する。解析されたパラメータを用いて、MO6八面体 (M: Mn, Ni, Ti)の八面体からの逸脱 (歪み)を算出して、遷移金属組成や空孔との関係を検討する。その際に、電極は炭素と有機物が添加されているため、中性子実験に不適であり放射光X線回折実験によって評価していく。いずれの結果も学会発表や誌上発表を行い、成果を公表していく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、次の3件が予定と異なる理由である。1.コロナ禍により4月~5月末まで大学への入構が禁止され、6月以降は学内で密集しないために各部屋の入室者数が制限されたため、実験の進捗が想定より遅れ、支出すべきであった項目が延期したため。2.多くの学会がオンライン開催となり学会参加に伴う出張旅費が支出されなくなったため。3.SPring-8とJ-PARCで予定していた量子ビーム実験が、コロナ禍のために実験施設側の都合により中止となり、予定していたその出張旅費が支出されなくなったため。 今年度が最終年度となるため、当初予定していた支出を行い適正に予算執行を行う。
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Research Products
(4 results)