2020 Fiscal Year Research-status Report
細胞小器官や膜ドメインを無蛍光イメージングするための分子開発
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18K05312
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
百武 篤也 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (70375369)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 非線形光学顕微鏡 / 無蛍光イメージング / マルチモーダルイメージング / 細胞膜イメージング / ジャイアントベシクル / SFG顕微鏡 / アゾ色素 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は非線形光学顕微鏡専用の開発された分子(BO)を用いた色素ベース和周波発生(SFG)イメージングを用いて、海馬細胞のイメージングを試みた。従来の無蛍光性の細胞膜染色用(Ap3)を用いると、細胞膜のみが染色される。一方BOで染色するとSFGが細胞膜では見られないと同時に、細胞内部からSFGが検出された。このことから、BOが細胞膜に到達すると、直ちに内部へ運搬されることが分かった。また、細胞の内部からSFGが検出されたことから、BOは細胞内部において膜に取り込まれた状態を維持しているだけでなく、取り込まれた二重膜の片側の脂質層のみにBO分子が存在していることが明らかとなった。このような現象はこれまでに報告例はないため、そのメカニズムや現象の特異性(BO分子でのみ起こることなのか)も不明であるため、それらの解明が急務である。 BO分子が両親媒性の膜色素であるにも関わらず、速やかに細胞内に取り込まれる機構として、1.BO分子が細胞膜に取り込まれた後、細胞膜ごとエンドサイトーシスのような形で内部へ取り込まれる。2.水中でミセルから解離した一部のBOモノマーが単純に膜透過する。3.BOが溶液中でミセルを形成し、そのミセルごと膜を透過し、その後、内部の膜構造に取り込まれる。などが考えられる。今後はBO分子のアルキル鎖長を変更した分子を用いてBOが細胞膜に取り込まれる機構と、細胞内での局在を解明する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染拡大によって余儀なくされた共同研究の一時停止による。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画は、「従来の無蛍光SHGイメージングは、細胞膜に適用範囲が限られていたため、本研究期間で無蛍光SHGイメージングの適用範囲を拡張するため、特に細胞内小器官や細胞膜の部分構造のイメージングを狙った様々な専用分子を開発する」という内容であった。まず2年目までには人工細胞系であるジャイアントベシクルを用いた実験において、専用色素でジャイアントベシクル膜に「表と裏」の印をつけて、和周波発生(SFG)イメージングを行ったところ、ベシクル膜の形態変化の前後で、印をつけた膜がどのように動いたかがわかるようになった。(Colloid Surface B, 2020)さらに昨年度は海馬細胞でのイメージングをおこない、本研究目的である細胞内部のSFGシグナルの検出に成功した。しかしながら、2020年の新型コロナウィルスの感染拡大に伴う、共同研究の一時中断が余儀なくされた。このような当初予期できない状況の中で、引き続き研究成果を発信するため、当初の研究計画を変更することとした。具体的には、本研究で開発した無発光性色素の光物理的性質に着目し、様々な生体分子との相互作用を解析するとともに、天然に存在する色素を模した新たな非線形光学色素の開発を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大に伴い共同研究の一時中断を余儀なくされたため。 共同研究推進のために新規非線形光学色素の開発に必要な試薬と同時に、非線形光学色素との相互作用解析に用いるオリゴヌクレオチド等の生体分子を購入する。さらに天然色素を模した非線形光学色素を開発するためのクロロフィル型色素を購入する。また開発した分子の様々な物性測定および成果発信に関連する費用として用いる予定である。
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Research Products
(6 results)