2019 Fiscal Year Research-status Report
グアニン四重鎖構造に基づくスイッチング可能なDNA金属酵素の開発
Project/Area Number |
18K05315
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
朴 昭映 京都大学, 理学研究科, 助教 (10628556)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | DNA / 金属酵素 / 不斉合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
自然界には、多様な生体分子が存在しており、生命現象に必要な役割を分担している。例えば、金属酵素は常温常圧、水溶液という温和な条件下で生理活性物質を生産している。一方で、それに並ぶ有機金属触媒の開発は、非常に難しい挑戦的なテーマである。本研究は、DNAの特徴的な四重らせん構造に着目し、多様な2次構造を精密制御することで、スイッチング可能なDNA金属酵素を開発することを目標とする。最近申請者は、DNAのリン酸骨格にビピリジン配位子を導入する方法を確立し、反応場の制御できない従来のDNAハイブリッド触媒の欠点を克服した精密制御可能なDNA金属酵素を開発することに成功している。本研究では、ビピリジン配位子を含む四重鎖ー二本鎖ハイブリッドDNAを構築し、不斉マイケル付加反応において良好なエナンチオ選択性で目的物を得ることに成功した。また、ニトロ化合物との相互作用が知られているユリア基を含むことで触媒能が向上することも見出した。 本研究は、生命化学と触媒化学、核酸化学という多様な研究分野を融合した学術的意義が高い研究であり、未来を先導する革新的技術として応用が期待できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請者が確立した方法を利用し、グアニン繰り返し配列の中心にビピリジン配位子を導入した四重鎖ー二本鎖ハイブリッドDNA配列を合成した。円偏光二色性分析(CD)を測定することによりK+イオン存在下で逆平行(antiparallel)型グアニン四重鎖構造を形成することを検証した。今回合成したDNAを用いて金属酵素としての応用を試みた結果、不斉マイケル付加反応において良好なエナンチオ選択性で目的物を得ることに成功し、現在論文投稿を準備している。また、新しいグアニン四重鎖構造を有するDNA金属酵素として、グアニン繰り返し配列の中心にヒスチジンを導入したDNAの合成にも成功し、その物性と触媒としての性能を検証した。この結果は国際的に著名なジャーナルに論文として報告している。最初の計画以上、多様なDNAの合成に成功し、有用な酵素としての応用を試みている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究で確立したDNAにヒスチジンを導入する方法を用いるとヒスチジン他にも様々なアミノ酸を導入することができる。今後の計画としては、アミノ酸が持つ金属配位能やルイス酸触媒機能に着目し、アミノ酸(ペプチド)-DNAハイブリッドの特徴を生かした実用的な金属酵素を開発することを目指す。テンプレートになるDNAの2次構造に関しては、二重らせん、四重らせん、四重鎖ー二本鎖ハイブリッドなど多様なDNAの立体構造が反応に与える影響についてメカニズム研究を行う。ターゲット反応に関しては環境調和的な酸化反応や加水分解反応のように汎用性の高い反応に着目し、生体酵素の優れた機能を保ったままでの熱的安定性や広い基質適用範囲を有する金属酵素を開発に取り込む。
|