Outline of Annual Research Achievements |
生体酵素の立体構造や優れた機能を保ったままでの熱的不安定性, 狭い基質適用範囲などの欠点を克服したハイブリッド触媒の開発は学術的・産業的に重要な課題である. しかし, タンパク質酵素の場合, 触媒活性を示す立体構造, すなわちユニークなフォルディング構造を再現することは極めて難しい. DNAは, 熱により不可逆的に変性しやすい蛋白質と異なり, 熱的にも化学的にも安定であり, 加熱した後冷やすと, 塩基配列の相補性によって再びもとの高次構造を形成する. 本研究では, ユニークならせん不斉, 優れた自己組織化能力を持つDNAに着目し, 高活性・高選択性を創出する独創的な反応場の構築を目指した. 申請者は, DNAのリン酸骨格に配位子を導入する方法を確立し, 反応場の制御できない従来のDNAハイブリッド触媒の欠点を克服したDNA金属酵素を開発している. 本研究では、ビピリジン配位子を含む四重鎖ー二本鎖ハイブリッドDNAを構築し, 不斉マイケル付加反応において良好なエナンチオ選択性で目的物を得ることに成功した. 興味深いことに, ビピリジン配位子とユリア基を組み合わせた触媒では, 逆のエナンチオマーが得られた. このことから, DNAハイブリッド触媒の反応性や選択性は, 機能性分子の空間的配置によって生じる反応場の構造に依存していることがわかった. 最近, 申請者はアミノ酸が持つ金属配位能やルイス酸触媒機能に着目し, アミノ酸と核酸を融合した新しいバイオハイブリッド分子を開発することに成功した. 代表的な成果として, ヒスチジン-DNAコンジュゲートを合成し, それがヘミン錯体と結合するとペルオキシダーゼとして優れた活性を示すことを見出した. また, トロンビンアプタマーの結合部位のチミンをフェニルアラニンに置換した分子を合成し, 結合親和性が著しく上昇することをも確認している.
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