2018 Fiscal Year Research-status Report
Searching for bioactive compounds from marine organisms at Ehime prefecture
Project/Area Number |
18K05336
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
倉本 誠 愛媛大学, 学術支援センター, 准教授 (50291505)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生物活性物質 / 構造解析 / 海洋生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,宇和海を中心に水深 100 m付近の海洋生物の採集実施している。通常では入手が困難な試料であるが,佐田岬漁協に所属する漁家の協力を得ることで採集が可能となっている。2018年度は通常の漁では回収されない生体を一ヶ月かけて約 150 kg入手できた。得られた生体は少ない物は 500 g程度,多い物で 30 kg程を得ることが出来た。これらの試料は冷凍保存後に,アルコール抽出液を作成し物質の探索研究を行った。 この抽出液について,HeLa細胞に対する増殖阻害活性および各種分光機器によるスペクトル解析を行った。最も強い活性を示す抽出液からは既知のカリクリン類と共に新規な構造を有するカリクリン類縁体およびディスコキオライド類を見いだした。これらは異性体を多く含むため分離が困難であったが,本年の交付金により導入したHPLCシステムを用いてカラム樹脂およびグラジエント溶媒系を組み合わせることで分離を達成した。また異なる生体より,新規な構造を持つポリアセチレン類を2種単離することが出来ている。これらの成果について,2018年度日本化学会春季年会において発表を行っている。 また,学会未発表であるが,2018年度に初めて採集できたイワカイメンの一種からは塩素原子を有する新規環状ペプチド類を見いだした。本物質については絶対立体化学の解明を行った後に学会発表の予定である。これ以外に,分離は完了していないが質量分析おいて臭素原子を含む物質および,塩素原子を複数含む低極性物質の存在が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,まず海洋生物の採集が大きな段階となる。2018年度は先に示したように漁家の多大な協力により試料の収集が出来た。次年度についても協力をえて採集を継続することが出来たことが可能となっている。また,試料の収集は天候に大きく影響を受けるが,一ヶ月の期間を採集に充てることで,約150 kgの試料を得ることが出来たことで,研究を進展させることが出来た。 研究の第二段階として,作成した抽出液について活性の評価を行ったが多くの抽出液で活性を確認することが出来た。試料の活性評価については事前の準備に基づいて順調に進行することが出来た。活性の示さない物についても粗分画を行い,分析機器によるスペクトル解析から,構造情報に基づく分離を実施した。これについても速やかに進展が出来ている。 精製に用いるHPLCシステムであるが,事前に設置していたグラジエントシステムが破損し,最終精製を行うことが出来なかった。しかしながら,申請していた新規装置を導入することが出来て,5種の新物質の発見が出来た。以上のことから本年度の研究はおおむね順調に進展させることが出来たと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度の研究において海洋生物の採集,活性評価,物質の分離と精製を実施し,おおむね当初の目的に従って研究を実施することが出来た。今後の研究においても同様に探索研究を展開する。 海洋生物の採集については2019年4月時点で開始しており,2018年と同様の試料収集が期待できる。昨年度見いだした活性を示す抽出物のうち,未分離の試料の分析を開始しているため,これについても研究を遂行する。昨年度新規構造物質を発見した試料については,微量同族体の分離,立体化学解析,詳細な活性評価を中心に研究を展開する予定である。
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