2018 Fiscal Year Research-status Report
Synthetic study of Andrastin C with high density of quaternary asymmetric carbons aiming at the elucidation of its mode of action
Project/Area Number |
18K05339
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
吉村 文彦 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (70374189)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アンドラスチン / ブラシリカルジン / ニトリル / 四級不斉炭素 / シアノエン反応 / 天然物 / 全合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
炭素環上に四級不斉炭素が密集した多環式天然物の合成は、「立体的に混み入った位置での立体選択的な結合形成」と「四級不斉炭素周辺の官能基化」という2つの困難な課題があるため、大きく立ち遅れている。本研究は、コンパクトなシアノ基を活用した反応設計を行い、このような天然物の全合成を革新する方法論を開発することを目的とする。4つの近接した四級不斉炭素を有し抗がん剤のリード化合物として期待されるアンドラスチンC、および新しいタイプの免疫抑制剤として期待されるブラシリカルジン類を合成標的に設定し、環を形成しつつ四級不斉炭素を含む連続不斉炭素が一挙に構築可能な効率性の高い新手法を開発して、その不斉全合成を行う。本年度得られた研究成果の概要を以下に示す。 1)アンドラスチンCの全合成研究:アンドラスチンCの全合成の基盤技術となる、環形成を伴う四級不斉炭素を含む連続不斉炭素の構築法の開発に取り組んだ。直線構造をとり他の官能基に比べてはるかに小さなシアノ基は、立体障害の大きな位置での結合形成に有利と考え、シアノ基を親エン体として用いる分子内シアノエン反応を立案した。熱的条件では反応は進行しなかったが、活性化条件を精査したところ、スルホン酸系のブレンステッド酸またはホウ素ルイス酸が本反応の優れた活性化剤となることが明らかになった。次に本反応について基質適用範囲を精査し、6員環炭素環形成に有用であることが分かった。また、分子内シアノエン反応の中間体である環状イミンは、含窒素化合物の有用な合成中間体と考えられる。そこで、これら中間体の変換法についても予備検討を行った。 2)ブラシリカルジン類の網羅的全合成:ブラシリカルジンAの全合成ルートを基盤として、アミノ酸部および糖鎖が異なるブラシリカルジンB,C,Dの不斉全合成を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)アンドラスチンCの全合成研究:基盤技術となる分子内シアノエン反応を用いる四級不斉炭素を含む連続不斉炭素構築型の環化反応を検討した。シアノ基のエン反応に対する親エン性の低さのため、この種の反応はほとんど知られていないが、エントロピー的に有利な分子内反応として利用すれば実現可能と期待し反応設計を行った。そして、分子内に求核部位としてアルケニル基を有するニトリルをメタンスルホン酸または三塩化ホウ素と処理すると分子内シアノエン反応が室温で速やかに進行することを見出した。またモデル基質を用いて検討を行い、本反応がアンドラスチンCのC環上三連続四級不斉炭素の構築に有用であることがわかった。 2)ブラシリカルジン類の網羅的全合成:すでに合成法が確立されたブラシリカルジンAアグリコン保護体に対して、金触媒を用いるグリコシルアルキニルベンゾエートのグリコシル化反応によりラムノース糖を導入し、ブラシリカルジンCの全合成に成功した。一方、ブラシリカルジンAの全合成中間体である三環性テルペンコア部に対してグリシン誘導体の不斉アルキル化反応を行い、ブラシリカルジンBとDに対応するアミノ酸部を構築した。最後にグリコシル化反応で適切な糖鎖を導入し、ブラシリカルジンBおよびDへと導いた。以上により、ブラシリカルジンA-Dすべての網羅的全合成法を確立し、その結果をAngewandte Chemie誌に発表した。本論文はSynfacts誌に紹介され反響を呼んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、合成上の最重要課題となるアンドラスチンCのCD環部構築法を、モデル基質を用いて確立する。ついで、シアノ基の特性を活用した環化反応を4度用いる独自の合成戦略に基づき、アンドラスチンCの全合成をめざす。具体的には、申請者が開発したアルカンニトリルから調製されるニトリルアニオンの分子内共役付加反応とH30年度に開発した分子内シアノエン反応を用いて四級不斉炭素を構築しつつABCD環を順次形成していくボトムアップ型の合成戦略でアンドラスチンCの全合成を行う。なお、アンドラスチンCは高度に官能基化された化合物である上、非常に稀な三連続四級不斉炭素を有するため、様々な分子変換に困難が予想される。適時、新手法を開発してこれらを解決する。一方、ブラシリカルジン類の研究では、構造活性相関に必要な合目的的に設計した各種類縁体の合成を行う。 これらの合成研究と並行して、本分子内シアノエン反応の中間体である環状イミンの変換反応についてさらに精査し、含窒素化合物合成法の開発へと研究を展開する。
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Causes of Carryover |
理由:試薬と溶媒、ガラス器具の一括購入により安価に購入することができた。当初計画以上に経費が削減できたため、次年度使用額が生じた。 使用計画:経費削減の結果生じた残額については、次年度の試薬と溶媒の購入にあてる。また、次年度予定している本研究成果の学会発表の旅費と雑誌論文発表における英文校正の費用に使用する計画である。
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Research Products
(8 results)