2018 Fiscal Year Research-status Report
Discovery of removable inhibitors targeting proteases
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18K05344
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
日高 興士 神戸学院大学, 薬学部, 講師 (30445960)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津田 裕子 神戸学院大学, 薬学部, 教授 (10098478)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | プロテアーゼ / 酵素活性 / リムーバブル阻害剤 / ビオチン / ストレプトアビジン / HIVプロテアーゼ / トリプシン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではプロテアーゼ阻害剤を直接的にビオチン化した誘導体を合成し、ストレプトアビジンの添加により酵素活性のOFFからONへの制御が可能な「リムーバブル阻害剤」を創製することを目的とした。 本年度は、HIVプロテアーゼのX線共結晶構造の情報を基に、結合に関与しない部位へ直接的にまたは連結構造を介してビオチン化したリムーバブル阻害剤を設計した。中でも、bPI-11とHIV-1プロテアーゼの共結晶構造の解析に成功し、ビオチン部位が結合ポケットから溶媒の水へと向かって伸びており、結合に影響することなくビオチンを導入できたことが明らかとなった。 また、リムーバブル阻害剤bPI-11のHIV-1プロテアーゼに対する酵素活性のON/OFF/ON/OFFの繰り返し制御が可能であることが分かった。この結果を基に、bPI-11を利用して血清中からアフィニティー精製したHIV-1プロテアーゼの酵素活性を検出し、再び薬剤を加えることにより、回復した酵素活性の阻害が確認できた。本結果は薬剤耐性検査が問題となる治療前の阻害薬の感受性試験への応用が期待される。 更に、トリプシン阻害剤の直接的ビオチン化を行い、新規リムーバブル阻害剤を設計して合成したところ、ヒトトリプシン酵素活性をOFFからONへと制御できることが分かった。本研究のリムーバブル阻害剤の設計手法は、その原理どおりに、アスパラギン酸プロテアーゼだけでなくセリンプロテアーゼを標的とする阻害剤にも応用できることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アミノ基をビオチン化したHIVプロテアーゼ阻害剤のbPI-11を合成し、bPI-11とHIV-1プロテアーゼの共結晶構造の解析に成功した。ビオチン部位が結合ポケットから溶媒の水に向かって伸びており、結合に影響することなくビオチンを導入できたことが明らかとなったことから、X線結晶構造に基づく分子設計が有用であることが示された。 既存のペプスタチンAとカテプシンDとの複合体のX線結晶構造データから、ペプスタチンAのC末端とビオチンのカルボン酸同士をヒドラジドで連結させた誘導体を合成したところ、pMレベルの強力なカテプシンD阻害活性を維持する化合物を得た。 セリンプロテアーゼであるトリプシンを標的としてリムーバブル阻害剤の設計を試みた。X線結晶構造情報からビオチン化部位を決定し、カルボキシ基をヒドラジド化してビオチンを結合させたところ、bPI-14はヒトトリプシン-2に対してサブμMのIC50値を示した。また、bPI-14により阻害したトリプシン-2は、ストレプトアビジンの量依存的に酵素活性が上昇し、過剰量の添加により十分に回復した。本結果から、bPI-14はトリプシン-2のリムーバブル阻害剤であることが分かった。 bPI-11によりHIV-1プロテアーゼの酵素活性を阻害した後でストレプトアビジンを添加して酵素活性が回復し、そこへ再び阻害剤を追加して酵素反応が抑制されたことから、酵素活性の繰り返し制御ができることを確認した。この結果を基に、血清中より結合させた野生型HIVプロテアーゼをbPI-11で溶出し、ストレプトアビジンを添加すると酵素活性が検出し、ダルナビル、ロピナビル、アタザナビルを加えて酵素活性を再び抑制した。本結果は薬剤耐性検査が問題となる治療前の阻害薬の感受性試験への応用が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度からは、各種プロテアーゼを標的としたビオチン化阻害剤の合成、プロテアーゼ阻害活性およびストレプトアビジンによる阻害活性消失の評価、アフィニティー結合プロテアーゼの酵素活性を検出、疾患原因タンパク質の分解を実施する。 各種プロテアーゼを標的としたビオチン化阻害剤の合成では、カテプシンDやβセクレターゼなどのアスパラギン酸プロテアーゼの阻害剤、また、トリプシンなどのセリンプロテアーゼの阻害剤について、X線結晶構造情報を基にビオチン化部位を決定し、アミノ基やカルボキシ基を介してビオチン化を行う。 プロテアーゼ阻害活性およびストレプトアビジンによる阻害活性消失の評価においては、ビオチン化阻害剤の各種プロテアーゼ阻害活性を測定して、ストレプトアビジン添加後の阻害活性の添加量依存的な変化を調べる。リムーバブル阻害剤の部分構造を変換し、阻害活性と水溶性を改善する。強い阻害活性を示し、ストレプトアビジンにより阻害活性がほぼ消失する、優れたリムーバブル阻害剤を同定する。 アフィニティー結合プロテアーゼの酵素活性を検出においては、シュードタイプのHIV様ウイルス粒子や、癌細胞の破砕液から標的プロテアーゼをアフィニティー結合し、リムーバブル阻害剤で溶出し、酵素活性を測定する。 疾患原因タンパク質の分解においては、アミロイドタンパク質をリムーバブル阻害剤を結合させたプロテアーゼを添加し、ストレプトアビジン処理で切断を観察し、プロテアーゼ医薬品としての可能性を評価する。 以上のように本研究を実施し、優れたリムーバブル阻害剤を獲得し、様々なプロテアーゼに対するリムーバブル阻害剤を用いて、血液や細胞成分からプロテアーゼの酵素活性を簡便に検出し、HIVや癌の画期的な診断薬の開発につなげる。そして、疾患原因タンパク質を分解するプロテアーゼ医薬品の開発をめざす。
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Research Products
(9 results)