2019 Fiscal Year Research-status Report
Discovery of removable inhibitors targeting proteases
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18K05344
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
日高 興士 神戸学院大学, 薬学部, 講師 (30445960)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津田 裕子 神戸学院大学, 薬学部, 教授 (10098478)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | プロテアーゼ / 酵素活性 / リムーバブル阻害剤 / ビオチン / ストレプトアビジン / トリプシン / アミロイドベータ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではプロテアーゼ阻害剤を直接的にビオチン化した誘導体を合成し、ストレプトアビジンの添加により酵素活性のOFFからONへの制御が可能な「リムーバブル阻害剤」を創製することを目的とした。昨年度の研究結果から本研究のリムーバブル阻害剤の設計手法は、アスパラギン酸プロテアーゼだけでなくセリンプロテアーゼを標的とする阻害剤にも応用できることが分かったことから、本年度はトリプシンを標的としてリムーバブル阻害剤を合成し、ビオチン化部位の検討およびOFF-to-ON活性を利用したタンパク質分解についての検討を行った。 選択的プラスミン阻害剤YO-2のX線構造情報を利用して選択的トリプシン阻害剤のOS-460のトリプシン-2結合モデルを構築し、ビオチン化部位を決定した。ベンゾフェノン構造をフェニル酢酸ヒドラジドに変換してビオチンを縮合したbPI-14はヒトトリプシン-2に対してOS-460よりも親和性が低下し、ストレプトアビジンの添加による酵素活性の回復は4割程度であった。一方、OS-460のベンゾフェノン骨格を残したbPI-15はOS-460と同程度の親和性を示し、ISAACによりトリプシン活性を阻害状態から7割回復した。次に、ビオチン化トリプシン阻害剤を用いて凝集性の病原タンパク質の分解を検討した。bPI-15とトリプシンの複合体をアミロイドベータペプチド(1-42)に添加したところ、ISAACによる分解消失を確認した。しかし、分解時間が長くかかったことから標的タンパク質の分解に適した他のプロテアーゼとの併用が必要と思われる。以上の結果から、直接的ビオチン化阻害剤はトリプシンの酵素活性をOFFからONに制御して標的タンパク質を分解したことから、本複合体は細胞外に蓄積した病原タンパク質を分解して除去するプロテアーゼ医薬品の開発につながると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アミノ基をビオチン化したHIVプロテアーゼ阻害剤のbPI-11を合成し、bPI-11とHIV-1プロテアーゼの共結晶構造の解析に成功した。ビオチン部位が結合ポケットから溶媒の水に向かって伸びており、結合に影響することなくビオチンを導入できたことが明らかとなったことから、X線結晶構造に基づく分子設計が有用であることが示された。bPI-11によりHIV-1プロテアーゼの酵素活性を阻害した後でストレプトアビジンを添加して酵素活性が回復し、そこへ再び阻害剤を追加して酵素反応が抑制されたことから、酵素活性の繰り返し制御が可能であることを確認した。この結果を基に、血清中より結合させた野生型HIVプロテアーゼをbPI-11で溶出し、ストレプトアビジンを添加すると酵素活性が検出し、既存のプロテアーゼ阻害薬を加えて酵素活性を再び抑制した。本結果は薬剤耐性検査が問題となる治療前の阻害薬の感受性試験への応用が期待される。既存のペプスタチンAとカテプシンDとの複合体のX線結晶構造データから、ペプスタチンAのC末端側をビオチン化した誘導体を合成したところ、強力なカテプシンD阻害活性を維持する化合物を得た。本ビオチン化阻害剤を用いてアフィニティー精製と組み合わせることにより、直腸癌細胞から釣り上げたカテプシンDの酵素活性を検出された。また、セリンプロテアーゼであるトリプシンを標的としてリムーバブル阻害剤を設計し、阻害活性およびリムーバブル能力の良好なbPI-15を獲得した。bPI-15とトリプシンの複合体のOFF-to-ON活性を利用してアルツハイマー病の原因とされるアミロイドベータペプチド(1-42)の分解にも成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、得られたリムーバブル阻害剤の構造最適化を進め、タンパク質分解を標的とした他のプロテアーゼを標的としたビオチン化阻害剤の合成、プロテアーゼ阻害活性およびストレプトアビジンによる阻害活性消失の評価、アフィニティー結合プロテアーゼの酵素活性を検出、疾患原因タンパク質の分解を実施する。 各種プロテアーゼを標的としたビオチン化阻害剤の合成では、トリプシン以外のセリンプロテアーゼを標的にX線結晶構造情報を基に阻害剤のビオチン化を行う。プロテアーゼ阻害活性およびストレプトアビジンによる阻害活性消失の評価においては、ビオチン化阻害剤の各種プロテアーゼ阻害活性を測定して、ストレプトアビジン添加後の阻害活性の添加量依存的な変化を調べる。アフィニティー結合プロテアーゼの酵素活性を検出においては、シュードタイプのHIV様ウイルス粒子や、癌細胞の破砕液から標的プロテアーゼをアフィニティー結合し、リムーバブル阻害剤で溶出し、酵素活性を測定する。疾患原因タンパク質の分解においては、アミロイドベータだけでなく様々な疾患原因タンパク質に対してリムーバブル阻害剤を結合させたプロテアーゼを添加し、ストレプトアビジン処理で切断を観察し、プロテアーゼ医薬品としての可能性を評価する。以上のように本研究を実施し、優れたリムーバブル阻害剤を獲得し、様々なプロテアーゼに対するリムーバブル阻害剤を用いて、血液や細胞成分からプロテアーゼの酵素活性を簡便に検出し、HIVや癌の画期的な診断薬の開発につなげる。そして、疾患原因タンパク質を分解するプロテアーゼ医薬品の開発をめざす。
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Causes of Carryover |
本年度支出状況から予算が足りなくなると予想されて20万の前倒し請求を行ったが、新型コロナウイルスの拡大の影響により2020年3月末の日本薬学会年会が中止となり、予定していた旅費の支出がなくなった。また、消耗品の購入が予定よりも減少した。これらの理由から56,745円の未使用額が生じた。本金額を次年度の消耗品の購入に使用することを計画している。
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Research Products
(9 results)