2018 Fiscal Year Research-status Report
高機能化ペプチド足場材料を利用した細胞の三次元培養と細胞外環境イメージング
Project/Area Number |
18K05351
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
堤 浩 東京工業大学, 生命理工学院, 准教授 (70398105)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ペプチド / 自己組織化 / ヒドロゲル / 細胞 / 三次元培養 / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞外にはpHや情報伝達物質、分泌酵素などの解析の対象とすべきさまざまな要因や生命現象が存在すると考えられるが、そのための手法は確立されていなかった。本研究では、人工的にデザインしたペプチド性足場材料を用いて細胞を三次元的に培養し、培養空間における細胞外環境をリアルタイムにイメージングするための手法を新たに開発することを目的とした。自己組織化ペプチドゲルを創製し、細胞の三次元培養へ展開し、三次元培養環境における細胞外pHや分泌酵素の活性のリアルタイム蛍光イメージングを行うことによりモデルシステムの確立を行うこととした。本年度は、これまでの申請者らの知見に基づいて設計した両親媒性の自己組織化ペプチドu(FFiK)2から成るヒドロゲルに細胞の接着や成長を促進する生理活性配列を導入したu(FFiK)2誘導体を合成し、自己組織化特性を評価した。全反射型赤外分光測定および透過型電子顕微鏡観察の結果、合成したペプチドはすべてβ-シート構造を形成してナノファイバーへと自己組織化することを明らかにすることができた。また、金コロイド標識ストレプトアビジンを用いて、ビオチン標識したu(FFiK)2誘導体とu(FFiK)2の混合ナノファイバー上に生理活性配列が提示されていることを確認した。次に、がん細胞であるMCF7と正常組織由来細胞であるHEK293細胞にGFPを安定発現させた細胞株を樹立し、ペプチドゲル内での細胞三次元培養の検討を行った。u(FFiK)2ゲルおよび生理活性配列を提示したペプチドゲルはいずれも毒性を示すことなくMCF7細胞およびHEK293細胞を分散・包埋することができた。また、いずれの細胞も培養でき、特に生理活性配列により機能化したペプチドゲルは細胞のスフェロイド形成と増殖あるいはゲル内での移動を促進できることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は生理活性配列を導入したu(FFiK)2誘導体の合成と機能評価および細胞培養条件の検討を計画していた。生理活性配列を導入したu(FFiK)2誘導体については液相合成法とFmocペプチド固相合成法を組み合わせることにより、高収率で合成する方法を確立することができた。蛍光プローブを導入したu(FFiK)2誘導体については、導入するプローブの化学構造等を考慮した合成法を検討し、おおむね最適化できており、ほぼ研究計画通りに遂行することができた。生理活性配列を導入したu(FFiK)2誘導体とu(FFiK)2を共組織化させて機能化ヒドロゲルを構築する実験は計画通りに遂行することができ、混合ナノファイバー上に生理活性配列を提示できることを実証した。 生理活性配列を提示したペプチドゲルの構築については、当初計画より早く進めることができたため、平成31度に計画していた自己組織化ペプチドゲルを用いた細胞の三次元培養法の確立を繰り上げて行うことができた。当初、がん細胞としてHepG2細胞を用いる予定であったが、GFP安定発現株の樹立に時間がかかったため、先にGFP発現株の調製ができたMCF7を用いて三次元培養実験を行った。MCF7を用いた実験で、三次元培養のための基礎的な条件検討を終えることができ、また提示する生理活性配列の違いによって、細胞の成長や移動などを制御可能であることを見出し、平成31年度の実験計画の一部を達成することができた。 以上のことから、研究課題の遂行に向けておおむね順調に計画を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度計画のうち、残っている蛍光プローブを導入した自己組織化ペプチドの合成と共組織化実験を遂行する。また、蛍光プローブを提示したペプチドゲル中での蛍光プローブの応答挙動を解析する。平成31年度計画の細胞の三次元培養はおおむね達成しているが、異なる細胞種を用いた検討を重ねることで、ペプチドゲルを用いた細胞の三次元培養のプロトコルを確立する。また、ペプチドゲルに提示した生理活性配列の活性について、免疫染色・ウェスタンブロッティング・RT-PCR法などを用いて詳細に解析する。平成31年度中に種々の細胞の三次元培養法を確立したのち、平成32年度に細胞外pH環境や分泌酵素活性のリアルタイム蛍光イメージングを行い、細胞外環境イメージングのための手法を確立する。また、各種の阻害剤を用いた実験により薬剤に対する細胞応答を検出するための細胞チップへの応用の可能性についても検証を進める。
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