2019 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of development method for fluorescent turn-on probes for lectins
Project/Area Number |
18K05352
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
金森 功吏 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (90633446)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 蛍光プローブ / 蛍光性分子ローター / GFP |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、糖鎖受容体のイメージングや阻害剤探索の基盤技術となるturn-on型蛍光プローブの効率的探索法の開発を行っている。本年度は、ビーズ上でのプローブスクリーニングのための検討、および蛍光色素の探索を進めた。まず、GFP色素を導入したビーズを合成し、共焦点顕微鏡を用いて観察した結果、ビーズ上に導入したGFP色素も蛍光を示すことを明らかにした。現在、蛍光応答が十分に大きくなるGFP色素の導入量などの条件検討を進めている。 また、これまでに合成したGFP色素について、種々の溶媒下での蛍光特性を調べた。その結果、メタノール中ではほぼ無蛍光であるがグリセロール中で強い蛍光を示す点に加え、一部の誘導体では水中においても強い蛍光を示すことを明らかにした。この理由は、水中で懸濁した状態が観察されていることから、凝集により分子内運動を伴う励起エネルギーの失活過程が抑制される、いわゆるAIE現象と考えられる。一方興味深いことに、グリセロールで強い蛍光応答を示すが、水中で懸濁しても蛍光を示さない色素もあることが分かった。このように、置換基の種類や置換位置によって粘度に変化に対する蛍光応答に顕著な違い現れることが分かった。 さらに、蛍光性分子ローターの基本骨格の探索も行った。蛍光性分子ローターの基本骨格としてはは、電子供与基と受容基を有し、回転可能な結合で連結された芳香族化合物が専ら用いられる。そこで、単純な構造の色素として、ニトロ基、メトキシ基などを有するビフェニル化合物を合成し蛍光特性を調べたところ、この色素についても蛍光強度の粘度応答性を確認した。さらに、これらのビフェニル誘導体に単糖類を結合させた種々の誘導体の合成を行った。今後、標的受容体に対する蛍光応答を調べる予定である。グルコース誘導体については、細胞表面のグルコース輸送体(GLUT)を介して細胞内に取り込まれ得ることも明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、プローブライブラリーの作成とスクリーニングによるプローブ探索ならびにin silico支援による分子設計を活用した探索法により、糖鎖受容体や他の受容体タンパク質に適用可能な蛍光プローブ開発法の開拓を目指しているが、今年度は、ビーズ上のプローブライブラリーを、蛍光を利用してスクリーニングする技術の確立に向け、ビーズ上へのプローブの導入を行い、つづいて蛍光顕微鏡による蛍光像観察を行い、ビーズ上でも蛍光色素由来の蛍光が観察できることを明らかにした。この結果を踏まえ、現在は標的分子との結合時の蛍光強度の変化量が十分に大きくなるよう条件検討を進めており、概ね順調に進捗している。 また、プローブの肝となる蛍光色素について、GFPの蛍光色素であるベンジリデンイミダゾリノン骨格ならびに、ビフェニルに電子供与基と吸引基を導入した蛍光色素について、置換基の種類や導入位置を種々変えた蛍光色素の蛍光特性を詳細に調べた。その結果、蛍光強度の粘度応答性や溶媒応答性に与える色素の構造的特徴について、今後の分子設計に重要な知見を得られた。特に、置換基の種類や位置によって粘度上昇に伴う蛍光強度変化が顕著に異なることが明らかになってきており、これらの知見を踏まえ、プローブに導入する改良型蛍光色素の設計と、プローブライブラリーの合成を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、ビーズ上での蛍光を利用したスクリーニングの条件を最適化した後に、これまでの知見を元に設計した蛍光色素と、標的タンパク質のリガンドやペプチド数残基からなるプローブライブラリーを、コンビナトリアルケミストリーに基づいてビーズ上に合成し、ビーズ上でスクリーニングするシステムを構築する予定である。見出されたプローブについて、必要に応じてin silicoによるドッキングシミュレーション等を活用した分子設計を行い、標的タンパク質との結合時の蛍光強度ならびに蛍光強度変化量の向上を目指す。さらに、蛍光顕微鏡を用いた細胞の受容体等のイメージングなどの実践的な応用研究を進めていく予定である。 また、本研究では標的タンパク質に非共有結合的に結合し蛍光色素の分子内運動を拘束させ蛍光応答を示すプローブ開発を進めているが、非共有結合的な結合に伴う分子内運動の拘束が不十分な場合、さらなるアプローチも検討する。すなわち、光によって標的分子に共有結合する光親和性残基をプローブに導入し、蛍光測定での励起の際に標的タンパク質に共有結合させ、蛍光応答を向上させることも視野にいれて研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、プローブを導入したビーズの作成やその蛍光検出のための条件検討および、蛍光色素の特性評価を中心に行ったため、有機合成や生化学実験等にかかる予算に余裕が生じた。生じた予算については、次年度のプローブライブラリーの固相合成およびそれらを用いたスクリーニング系構築のための評価実験や細胞を用いたイメージングのための生化学実験に使用していく予定である。
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Research Products
(2 results)