2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K05358
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
坂本 寛 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (70309748)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平 順一 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 助教 (20549612)
森本 雄祐 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (50631777)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ヘム / センサー / プローブ / イメージング / FRET |
Outline of Annual Research Achievements |
Ⅰ.B 蛋白質-蛋白質間相互作用を利用した発光型ヘムセンサー(第3世代)の構築 ヘムはヘムタンパク質の補欠分子族として存在するが,微量ながら遊離状態で存在する遊離ヘムは,生体に多様な影響を与えることが知られている。しかし,遊離ヘムの生体内局在や動態など不明な点も多く,そのため,遊離ヘムを選択的に定量できるバイオセンサーの開発が求められている。本研究では,これまでに遊離ヘムを検出するためのヘムセンサーとして,ヘム分解系酵素であるヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)およびシトクロムP450還元酵素open型変異体(deltaTGEE)と,蛍光タンパク質CFPおよびYFPを融合させた1分子型FRETヘムセンサー(CFP-HO-1-deltaTGEE-YFP)を作製したが,ヘム添加実験において,CFPとYFPの蛍光が共に減少することが観測された。このことから,CFPの蛍光エネルギーがHO-1に結合したヘムに吸収されたためにFRETが生じないことが示唆された。 そのため,ヘムへのエネルギー吸収を回避するために蛍光タンパク質の配置を入れ替えたセンサー(YFP-HO-1-deltaTGEE-CFP)の作製を試みたが,精製過程での不溶化のため,収率よく目的タンパク質が得られなかった。そこで本年度は,YFP-HO-1-deltaTGEE-CFPの可溶性の向上を目指して様々な手法を試みたが,満足のいく結果は得られなかった。 その一方で,YFP-HO-1-deltaTGEE-CFPのヘムセンサーとしての機能を評価するため,HO-1とdeltaTGEEを融合せずに,YFP-HO-1とdeltaTGEE-CFPを独立して発現・精製し,ドナーとアクセプターを分離した2分子型センサーを作製した。この2分子型センサーでは,ヘム添加実験において,FRETを観測することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1分子型センサーの調製:ベクターの変更,His-tagの位置(N末端またはC末端),蛍光タンパク質の連結配列の変更などを行ったが,収量の向上には繋がらなかった。1分子融合タンパク質としたことで,タンパク質としての取り扱いが極端に難しくなり,迅速な精製操作が求められるが,担当者の技量がそれに見合わず,進捗が遅れた原因となった。 2分子型センサーの調製と機能解析:YFP-HO-1およびdeltaTGEE-CFPを大腸菌BL21(DE3)株にて,それぞれの発現ベクターを用いて発現した。集菌後,菌体を超音波破砕し,遠心分離を行った。破砕後の上清をHis-Tagを用いたNiアフィニティクロマトグラフィーに供し,目的タンパク質を精製した。二分子間FRETヘムセンサーに対して,励起波長を385 nmとし,ヘミンを0.2当量ずつ段階的に添加した結果,1.0当量までは476 nm(CFP)に対する523 nm(YFP)の蛍光強度比(523 nm/476 nm)がヘミン濃度依存的に増加し,1.0当量以上添加すると,523 nm/476 nmの増加が頭打ちとなった。一方,YFP-HO-1単体で同様の滴定実験を行ったところ,523 nmの蛍光強度はわずかに減少だけであった。これらの結果より,2分子型センサーでは,ヘムがHO-1部分に結合することによって,HO-1・ヘム複合体とdeltaTGEEとの特異的な複合体が形成し,このことが両タンパク質に融合した蛍光タンパク質同士の近接を誘発し,FRETを生じたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
Ⅰ.B 蛋白質-蛋白質間相互作用を利用した発光型ヘムセンサー(第3世代)の構築:2分子型FRETセンサーを用いて,さらに機能解析を進めるとともに,1分子型センサーについてもHO-1とdeltaTGEE間に水溶性の高いスペーサー配列を導入するなどの改良を行う。 Ⅱ.B 細部内ヘムのバイオイメージング:これまでのヘムセンサーを用いたヘム検出法は,遊離状態のヘムが結合することによる蛍光の消光に焦点を当てていたが,生体サンプル中のヘム検出に関しては,非特異的な結合の存在などにより課題が残る。そこで,生体サンプル中の物質に非特異的に結合した状態で存在するヘムの量を評価するために,センサーの蛍光の回復を用いるヘム検出法の検討を行う。
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Causes of Carryover |
昨年度,他の外部資金で大量の薬品,試薬,消耗品を購入した。今年度はそれらを実験に用いたため,物品の購入は予定よりも少なくてすんだ。また,学習教育センター長として,コロナ禍におけるオンライン教育体制の確立などの業務に多くの時間を費やした。次年度使用額は,主に実験に必要な消耗品等の購入に充てる。
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