2018 Fiscal Year Research-status Report
耐性変異克服へ向けた「キナーゼドメイン間相互作用阻害型」新規キナーゼ阻害剤の創製
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18K05359
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
小橋川 敬博 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 准教授 (90455600)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森岡 弘志 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 教授 (20230097)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | チロシンキナーゼ / FGFR / 自己リン酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
チロシンキナーゼは抗癌剤開発の主要な標的タンパク質である。これまでに数多くのチロシンキナーゼ阻害薬が開発され、臨床において使用されてきた。しかし、薬剤耐性変異体の出現が問題となっている。本研究課題の目的は、薬剤耐性変異体の克服を目指して、チロシンキナーゼの活性化に関わるキナーゼドメイン間相互作用面を標的とした新しいタイプのチロシンキナーゼ阻害剤の創製に資することである。現在使用されるチロシンキナーゼ阻害薬は基質であるATPの結合を妨げるATP拮抗阻害薬である。FGFR1の薬剤耐性変異体の1種において、ATPに対する親和性の向上が阻害剤耐性機構であることを報告しており、EGFRにおいても同様の報告がある。ATPに対する親和性の向上がキナーゼ間で共通する薬剤耐性機構の一つとなっている可能性が高く、ATP結合部位以外を標的とした阻害剤の創製が薬剤耐性変異体を克服する上で有効な手段となり得る。本研究課題では、受容体型チロシンキナーゼが活性化される際にキナーゼドメイン間で過渡的に2量体構造を形成することに着目し、その相互作用面を標的とした阻害ペプチドを創製を試みた。 これまでにFGFR1のキナーゼドメイン間2量体構造を解析し、C-ローブにあるα-ヘリックス Gが主要な相互作用面を形成することを明らかにしている。そこで、この構造を模倣し、かつ、最適化できれば強い結合を示すペプチドが得られると推測される。ヘリックス-ループ-ヘリックス (以下、HLH)構造を形成するペプチドの一方の面にランダムなアミノ酸を導入した構造規制型ペプチドライブラリーが報告されている。そこで、HLHペプチドにα-ヘリックス Gの配列を移植したペプチドを設計した。示差走査蛍光測定 (DSF)により、このペプチドがFGFR1のキナーゼドメインに結合することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、HLH構造を有するペプチドライブラリーを用いたファージディスプレイによるFGFR1のキナーゼドメインに結合するペプチドの探索を行っている。その結果、Proを有する配列が多数見いだされており、HLH構造をとっていなと考えられた。そのため、ランダムライブラリーの利用には限界があると判断した。そこで、HLH構造を有するペプチド上にFGFR1のα-ヘリックス Gの配列を移植する戦略に切り替えた。その結果、このペプチドがFGFR1のキナーゼドメインに結合することを確認している。以上のように、ライブラリーの妥当性について早期に判断し、見切りをつけ、戦略を切り替えることで少なくとも、FGFR1のキナーゼドメインに結合するペプチドを得たことは重要な知見と言える。以上の理由により、本年度はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、少なくとも、FGFR1のキナーゼドメインに結合するペプチドの取得に成功している。このペプチドについて、FGFR1の自己リン酸化への影響について評価を行う。また、耐性変異体を対象とした評価についても行う。それらの結果に基づき、FGFR1のキナーゼドメインに対してより結合が強い配列の取得を目指す。FGFR1の変異体を用いた自己リン酸化実験の結果から、α-ヘリックス Gの配列のうち、自己リン酸化活性において重要な部位が特定できている。そこで、その部位をランダム化したHLHペプチドライブラリーを設計する。この際、Proが出現しないようにライブラリーを設計することでHLHの足場構造を維持する。
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Causes of Carryover |
平成30年度は旅費の使用額が少なかったことにより次年度使用額が生じた。9月に札幌で開催される第57回NMR討論会に参加予定であり、そのための旅費を計上していたが、9月6日に発生した北海道胆振東部地震の影響により学会急遽中止になったために旅費の使用額が想定よりも少なくなった。そのために、次年度使用額が生じた。研究の進捗への影響は軽微であったと考えている。今後、新たなHLHペプチドライブラリーを構築するために費用がかかることが予想される。平成30年度に、旅費として使用を予定していた分の残りについては、平成31年度に消耗品として使用する予定である。
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