2018 Fiscal Year Research-status Report
がん細胞におけるGSTP1の機能解明を目指すGSTP1蛍光プローブ群の創製
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18K05362
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
藤川 雄太 東京薬科大学, 生命科学部, 助教 (90645144)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 蛍光プローブ / 薬物代謝酵素 / GST / ケミカルバイオロジー / レドックス / グルタチオン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、様々ながん細胞で過剰発現しているPiクラス型グルタチオンS-転移酵素(GSTP1)を標的分子として、様々な特性を有するプローブ群の開発を目指した。これまでの研究において、「GSTP1選択的に反応を受ける分子構造」を見出し、これを汎用的な蛍光団TG(TokyoGreen)と融合し、蛍光プローブPs-TGを開発した。 そこで本課題開始後は、GSTP1高選択性を有する反応部位の汎用性を確かめつつ、新たな性質を有するプローブ分子を創製することを目的とした。すなわち、TG以外の蛍光団を融合した2種類の蛍光団、ナフタルイミドおよびロドールを母核としたプローブ分子を設計・合成した。これらのプローブはどちらも反応前にはほとんど蛍光を示さないが、GSTP1による反応を受けて大きな蛍光増大を示した。特にロドール型プローブは540nmの励起波長によって、赤色蛍光を示す。以上の点から、蛍光団が変化してもGSTP1選択的な反応部位の選択性が担保されることが明らかとなった。さらに細胞イメージングにおいて、アセチル化したロドール型プローブを細胞内へ導入したところ、未反応分子の蓄積に伴うバックグラウンド蛍光はあるものの、GSTP1とともに、がんマーカータンパクであるγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)を標的とした緑色蛍光プローブとの共染色が可能であることが明らかとなった。今後、より詳細な解析を行うにあたり、分子の脂溶性を勘案し、アセチル化不要なデザインを行う必要があると考えられる。 また、研究の過程において、GSTP1によるグルタチオン化反応を受けることで吸収スペクトルが変化し、発蛍光性となるプローブ分子を偶然にも見出すことができた。本プローブの合成は非常に簡便であり、かつ誘導体も合成しやすいため、今後、誘導体展開を進めて、本化合物の特性を利用したプローブ分子の開発を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
独自に見出したGSTP1反応点を組み込んだ赤色蛍光を示すOFF/ON型GSTP1プローブの開発に成功した。さらに細胞への適用によって、GSTP1活性を捉えることができ、他のプローブとの併用によってGSTP1を含む複数のがんマーカータンパクの同時染色できる可能性が示唆された。さらに、蛍光団を変化させたプローブ分子の開発のみならず、GSTP1の基質となる蛍光団そのものを見出すことができた。本基質は、新たなプローブ群のデザイン戦略として有用と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度には、平成30年度に偶然見出した吸光度変化型プローブ分子をベースとした構造展開を行う。近年GSTP1は細胞質のみならず、核やミトコンドリアに局在することが知られている。そこで構造展開の結果に基づき、オルガネラ標的化部位を分子内に付与することで、オルガネラに局在するプローブ分子を開発する。合成した化合物は酵素アッセイならびにGSTP1を発現させた培養細胞系にてその活性を評価できるか検討する。 またこれまでの実験に於いて、しばしばプローブの脂溶性の低さが問題となっている。一般的に脂溶性の低い化合物は、①アニオン性を持つ部分を保護基によってマスクする、あるいは②分子そのものの脂溶性を向上させることによって細胞膜透過性を向上させる。現在までの研究においては、前者によるアプローチを試みたが、未反応の化合物が細胞内に蓄積した結果、バックグラウンド蛍光の上昇が見られた。そのため、今後は後者のアプローチに切り替えて、構造展開を行う予定である。
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