2018 Fiscal Year Research-status Report
Effects of heavy application of phosphate fertilizer on cadmium dynamics in upland fields
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18K05367
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
谷 昌幸 帯広畜産大学, グローバルアグロメディシン研究センター, 教授 (00271750)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | カドミウム / 普通畑土壌 / リン酸肥料 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、農耕地土壌におけるカドミウムの実態と蓄積を明らかにすることを目的に、未耕地と農耕地の土壌断面におけるカドミウムの垂直分布、および普通畑圃場の表層土壌におけるカドミウムの水平分布について調べた。 北海道十勝地域に広く分布する淡色黒ボク土および厚層黒ボク土を対象に、土壌の仮比重と層厚差を考慮して、農耕地とそれに隣接する未耕地の土壌断面における面積当たりの全カドミウム量の垂直分布を比較したところ、いずれの土壌においても、農耕地の作土層で全カドミウム量が著しく多く、作土層以深で急激に減少し、下層土では未耕地と農耕地でほぼ同じ値を示した。 カドミウム以外の元素の垂直分布と比較したところ、農耕地における全リン量と全カドミウム量の垂直分布は、作土層において未耕地よりも顕著に多くかつ均一に分布すること、作土層直下で急激に減少すること、下層土において未耕地とほぼ一致することの3点について顕著に類似した。一方、全カルシウム量、全マグネシウム量、全カリウム量および全亜鉛量との間には類似した点は見られなかった。 北海道十勝地域50地点および上川地域40地点の計90地点の普通畑圃場から採取した表層土壌を供試し、全カドミウム量を調べたところ、十勝地域は0.24~0.60mg/kgの範囲で平均0.42mg/kg、上川地域は0.06~0.18mg/kgの範囲で平均0.11mg/kgであった。十勝地域は上川地域と比べて全カドミウム量が顕著に多かったが、いずれの地域においてもその最大値は非汚染表層土壌の範囲内であった。いずれの地域も、表層土壌の全リン量と全カドミウム量との間に1%水準で有意な正の相関関係が認められた。 以上の結果から、農耕地土壌の作土層に多量のカドミウムが集積していること、その集積にはリン酸肥料の過剰な施用が影響を及ぼしている可能性が高いことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、研究計画どおりに順調に進んでいる。研究実績の概要でも述べたとおり、未耕地と農耕地の土壌断面におけるカドミウムの垂直分布については分析実験やデータ解析などを全て終了しており、現在は論文を投稿するために原稿作成を行っている。また、普通畑圃場の表層土壌におけるカドミウムの水平分布については、全元素含量の分析実験が終了している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、研究計画どおりに研究を推進する予定である。普通畑圃場の表層土壌については、可給態カドミウム量の分析実験を進める予定である。また、普通畑圃場で生産されたバレイショ塊茎試料についても、塊茎のカドミウム濃度について分析実験を進める予定である。平成30年度に得られた結果を含めた総合的な解析を同時に進め、学会発表や論文投稿などを積極的に行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
平成30年度は、当初の経費所要額に対し、実験補助のための人件費や調査旅費などの支出が少なかったために、次年度使用額が発生した。平成31年度(令和元年度)は、より多くの調査や分析を実施するため人件費や調査旅費が多く必要であることに加え、論文投稿を計画よりも早く進めるため、翌年度分として請求した助成金と合わせて有効に使用する予定である。
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