2019 Fiscal Year Research-status Report
高CO2環境は水田土壌肥沃度にどう影響するか?多品種水稲残さによる検証
Project/Area Number |
18K05370
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
八島 未和 (松島未和) 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 講師 (60527927)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 水田土壌 / 肥沃度 / 高濃度大気CO2 / 稲わら / リグニン / NSC |
Outline of Annual Research Achievements |
コメの生産を支える水田土壌肥沃度は、現在進行している大気CO2濃度の増加により確実に変化すると考えられるが、関連知見は絶対的に不足しており、将来予測に使用される現行の物質循環モデルは高CO2影響を加味していない。水稲残さを通した土壌肥沃度への高CO2影響を精査し、将来予測の不確実性を低減すべきである。 本研究は、1.高CO2が水稲残さ(実際の高CO2圃場で採取したもの)に与える質的変化を多品種で検証する。2.高CO2が水稲残さを通して土壌肥沃度に与える影響を検証する。本研究でゴールとしているのは次の二つの疑問に答えることである。A) 大気CO2濃度増加は、水稲残さのLitter Chemistryを変化させるか?B) 大気CO2濃度増加による水稲残さへの影響は、品種によって異なるか? 2か年目である2019年度においては、初年度で選定された使用すべきイネ品種(つくばみらい市で行われた水稲を対象としたFree air CO2 enrichment試験(FACE試験)の実施中(2010-2017)に採取した稲わら)に対し、Non structural Carbon (NSC)の分析とリグニンの含有量分析を行った。リグニン分析に多くの時間を要した。また、プレリミナリーな培養実験も行った。当初の試験計画では、休閑期中をシュミレートする長期低温培養実験を予定していたが、本年度は短期の分解試験を行い、稲わらがごく初期に分解される様子を観察することを目的とした。結果として、数時間単位で相当量の炭素が分解されうること、分解時期によって大気CO2濃度増加の効果が異なって現れること、などが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目終了時に掲げていた目標である『選出したすべての品種におけるLitter Chemistryの分析』について、NSCおよびリグニンについては終了し、解析が進んでいる。また、初年度に新たに加えた根の分析たについても、問題なく進んだ。土壌を用いた分解試験についてはまだ開始していないが、本年度にプレリミナリー試験が無事終了したため、準備が整い次第、開始する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年次である2020年度では、土壌中における稲わらの分解試験を行うことが最も大きな課題となる。また、新たに加えた分析項目を進めることも計画しているが、そのためには研究協力者の所属機関に出向く必要がある。しかし、4月下旬現在、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、上記2点について、停止している状態が続いている。 そのため、まずは、現在得られている実験結果を取りまとめ、統計分析等を行うことを第1目的とし、その後に実働が必要な実験を行う順番とする予定である。
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Causes of Carryover |
今年度、研究発表などを行わなかったため、旅費に余剰が生じたことや、新しい薬品等が必要ない分析が主であったため、次年度使用額が生じた。次年度は、さらなる分解試験や研究成果発表を進めるため、学会参加などを行い、余剰分を使用する予定である。
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