2019 Fiscal Year Research-status Report
水田土壌における微好気性鉄酸化細菌の鉄酸化特性および群集動態の解析
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18K05372
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
渡邉 健史 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (60547016)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 鉄酸化細菌 / 水田土壌 / 群集構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、土壌中の鉄の酸化還元状態の変化と微好気性鉄酸化細菌の群集動態の関係性および微好気性鉄酸化細菌の鉄酸化特性を明らかにし、水田生態系の鉄酸化反応における微好気性鉄酸化細菌の役割を位置付けることを目的としている。 本年度はまず、昨年度に引き続きX線吸収微細構造(XAFS)分析手法を用いて、土壌中の鉄酸化物の化学形態、特に鉄酸化反応により最初に生成するとされるフェリハイドライトを対象とした解析ができるかどうかを試みた。田畑輪換圃場のダイズ栽培3年目の土壌と、連年水田の土壌を分析に供試した。得られたスペクトルを各種標準物質のXAFSスペクトルと比較した結果、どちらの土壌中の鉄も、半分以上がイライトに由来することが示された。また、レピドクロサイトやヘマタイトは検出されたが、フェリハイドライトは検出されなかった。したがって、バルク土壌そのものを用いたXAFS分析では、鉄酸化反応によって生成したフェリハイドライトに焦点を当てた分析は困難であると考えられた。 次に、土壌中の微好気性鉄酸化細菌群集の動態と鉄の酸化還元状態の関係を明らかにすることを試みた。国際イネ研究所で試験された節水水稲栽培圃場の土壌より抽出したDNAを対象に、Gallionellaceae科微好気性鉄酸化細菌の群集構造をqPCR、DGGEおよびクローンライブラリー法により解析した。その結果、節水水稲栽培により微好気性鉄酸化細菌の菌数は増加する傾向にあること、群集構成も影響を受けることが明らかになった。また、土壌中の活性2価鉄含量は節水水稲栽培の影響を受けて減少傾向にあり、菌数との間に負の有意な相関関係があることが示された。以上より、節水水稲栽培に伴う土壌中の鉄の酸化還元状態の変化に対応して、微好気性鉄酸化細菌の群集構造も変化することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
XAFS分析によるバルク土壌中のフェリハイドライトを対象とした解析は困難であったが、節水水稲栽培圃場を対象とした解析から、群集の動態と鉄の酸化還元状態の変化の関係性を見出すことができた。異なる管理体系下でのさらなる群集動態の解析のため、田畑輪換圃場からの土壌試料の採取も継続して行っている。土壌を用いた室内培養実験は今後行うことを計画しており、全体として順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
分離菌株を用いた鉄酸化特性の解析について、次年度は菌株の代謝産物に注目した解析を試みる。微好気性鉄酸化細菌は、鉄酸化と同時に多糖類を主成分とした菌体外高分子物質を生成すると考えられており、菌が生成した多糖類の検出を試みる。 また、田畑輪換圃場圃場より継続して採取してきた土壌試料および室内培養した土壌を対象とした群集構造解析を行い、鉄の酸化還元状態の変動と群集構造の変化の関係性をさらに解析する。 以上の分離菌株を用いた解析、室内モデル実験および圃場調査を通じて、水田生態系の鉄酸化反応における微好気性鉄酸化細菌の役割を位置付ける。
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Causes of Carryover |
2019年度にXAFS分析を引き続き行うために、2018年度未使用分を繰り越したが、2019年度は名古屋大学の研究支援制度により分析を行うことができたため、あいちシンクロトロン光センターの使用料はかからなかった。この差額分は、次年度の分離菌株を用いた分析などに用いる予定である。
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Research Products
(5 results)