2019 Fiscal Year Research-status Report
根端メリステムを有害元素から防御する分子メカニズムの解析
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18K05377
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
浦口 晋平 北里大学, 薬学部, 講師 (20638837)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 有害元素 / シロイヌナズナ / 細胞周期 / DNA損傷 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度,シロイヌナズナのファイトケラチン合成酵素AtPCS1変異株cad1-3の解析から,フェニル水銀の解毒にAtPCS1が必須であること,フェニル水銀の毒性のターゲットは根端分裂組織の細胞分裂活性やオーキシン恒常性である可能性が示された。本年度は,主に細胞周期に及ぼす影響について解析を進めた。まず,静止中心に対する水銀化合物の影響を解析したところ,無機水銀処理はWOX5-GFPの発現を大きく低下させた一方で,フェニル水銀処理によっては影響されなかった。続いて,G2/M期のマーカーであるCYCB1;2-YFP およびS期のマーカーとしてEdU陽性細胞を水銀処理された根端について観察したところ,細胞周期が停止している可能性が示された。定量PCRによって細胞周期マーカー遺伝子群の発現解析を実施したところ,細胞周期の停止がさらに示唆された。BRCA1やRAD51などDNA損傷の修復に関わる遺伝子群の発現誘導が観察され,フェニル水銀が誘発する根端の異常な肥大の一因としてDNA損傷を起因とする細胞周期の停止が考えられた。 もう一つの仮説であるオーキシン恒常性の撹乱については,PIN1,PIN2,PIN3のGFPレポーター系統,さらにオーキシン分布の解析のためDR5rev::GFP系統の予備的な観察を行った。 関連して,有害元素に対する表現型を解析するためのシロイヌナズナの培養条件の最適化を試みた。プレート培地の固形化に用いる寒天試薬について複数検討し,cad1-3など有害元素感受性変異株の水銀化合物など有害元素に対する感受性が安定してより明瞭に現れる試薬を選定した。 また,AtPCS1を介したフェニル水銀解毒機構のin vitroでの検証として,ファイトケラチンとフェニル水銀の結合性を定量するため,ファイトケラチン担持ビーズを用いた金属結合試験法を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有害元素の元素種や化学形態によって植物の成長に重要な根端分裂組織への毒性の機序が異なる可能性を分子レベルで明らかにしつつある。とくに,フェニル水銀処理による根端の細胞の異常な肥大の要因として,DNA損傷とそれに伴う細胞周期の停止の可能性を見出した。また,有害元素に対するシロイヌナズナの表現型解析を進めていく上で培地条件による感受性の変動が問題だったが,表現型が安定して観察される寒天試薬のスクリーニングにより選定した。また,フェニル水銀の解毒機構の解析法として,in vitroでのファイトケラチンとの結合性の試験法を開発した。
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Strategy for Future Research Activity |
水銀化合物処理がDNA損傷を誘発し,細胞周期の停止に連鎖する可能性が見出されたことから,実際のDNA損傷の程度について解析を進める。また,昨年の結果からNAA添加がフェニル水銀毒性を緩和することを見出しており,本年度確立したオーキシン輸送体PINの発現やオーキシン分布の解析を進める。また,PINやオーキシンシグナル伝達因子の変異株の水銀化合物に対する応答を解析し,オーキシン恒常性と有害元素応答の関連性を分子遺伝学的に明らかにする。 また,昨年度までに変異株の表現型からAtPCS1がフェニル水銀耐性に重要であることを明らかとしたが,耐性の分子機構についてin vitroでのAtPCS1によるファイトケラチン合成活性や,ファイトケラチンとフェニル水銀との結合性について本年度開発したビーズを用いた試験法により解析する。
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