2019 Fiscal Year Research-status Report
コメのヒ素濃度を低下させる新規変異遺伝子の機能解明
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18K05380
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
林 晋平 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 研究員 (40781323)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 覚 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, ユニット長 (40354005)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ヒ素 / 米 / イネ / 土壌 / 変異体 |
Outline of Annual Research Achievements |
玄米のヒ素濃度が低下したコシヒカリ変異体las1とlas3の解析を実施した。前年度までにlas1とlas3の原因遺伝子の同定とその遺伝学的な証明を完了していた。 分離したlas1変異体では転座が生じており原因遺伝子以外へも大きな影響を与えていることが示唆された。他の遺伝子の影響を除き、表現型を正確に評価するため、ゲノム編集技術によりlas1のallele変異体を作出した。元素分析の結果から、las1ではヒ素以外に複数の元素の量が変化しており、細胞間の元素の流れが野生株と異なることが示唆された。また、イネに8つ存在するLAS1のパラログ遺伝子の役割も明らかにするため、これらの破壊株をゲノム編集技術により作出した。 イネにはLAS3タンパク質と同様の酵素活性を持つと推定されるパラログが2つ存在するため、機能余剰性を調べるためにこれらの破壊株を作出した。パラログの破壊株のヒ素濃度を測定し、これらでは低ヒ素形質が現れないことがわかった。LAS3とパラログを認識する抗体を作製し、これを用いたタンパク質レベルの解析から、LAS3のタンパク質レベルの高さがパラログとの決定的な違いであることが示唆された。また、このLAS3と協調して働くことが知られている因子の破壊株も作出した。様々な生育ステージで元素分析と遺伝子発現解析を実施した結果、las3変異体では特定の時期からヒ素の吸収が低下することがわかった。また、この吸収低下を説明する遺伝子発現の変動を見出し、その変動メカニズムについて仮説を立てて検証を行ない、仮説を指示する結果を得た。これまでのデータをまとめてlas3が低ヒ素形質を示すメカニズムを提唱する論文作成を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成31年度は、las1とlas3の基本的な特徴付けとパラログ等の破壊株作製を計画していた。年度内にこれらの計画を達成した。las3については最終年度の計画であった低ヒ素形質のメカニズム検証と論文作成を前倒しで達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
las1については、これまでに得られたデータからメカニズムの仮説を立てて検証し、成果の公表を目指す。las3については、論文を投稿し成果の公表を行なう。また、研究をさらに発展させるため、LAS3と協調して働く因子群の機能解明に着手する。
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Causes of Carryover |
当初の計画よりも安価で入手できた消耗品があった。これらの理由により生じた次年度使用額は、研究の進行に伴って生まれた課題への対応に充てる。
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