2020 Fiscal Year Research-status Report
生物による物質生産研究を加速する菌体内アルデヒド生成量の可視化技術の開発と応用
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18K05386
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 勇樹 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (90444059)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 進化分子工学 / 非侵襲的手法 / リアルタイム / バイオセンサー / アルデヒド / 物質生産 / 発光検出 |
Outline of Annual Research Achievements |
微生物を用いた物質生産では、目的生成物の収量を最大化するために、多くの実験・培養条件が試行され、最適な条件が決定される。しかし、その最適化において、目的生成物の定量には、多くの時間と労力を要するため、物質生産の律速段階となっている。本研究では、大腸菌内で、目的生成物であるアルデヒドの生成量に応じて発光する大腸菌の開発を目指した。本手法は培養過程における大腸菌の発光を外部から観測することで目的物の生成量(酵素活性)を非破壊的に、かつリアルタイムに評価できる革新的手法である。 本年度は、発光を利用した、次世代バイオ燃料と香料、医薬品原料となるアルデヒドを生成する酵素の高活性化について研究を行った。すでに大腸菌で発光する酵素を発現し、外部から目的のアルデヒドを添加することで、大腸菌が発光することを確認できており、本年度は、目的のアルデヒドを生成する遺伝子回路を構築し、発光を利用した進化分子工学による、アルデヒド生成酵素の高活性化を目指した。遺伝子回路に必要な遺伝子群の構築を進めていたが、新型コロナウイルスの感染状況が悪化し、感染予防措置として研究室の併催や、研究活動時間の短縮を余儀なくされため、進化分子工学によるアルデヒド生成酵素の高活性化には至っていない。 この他に、以下の研究成果も得られた。 バイオ燃料として期待されるアルカン(軽油相当)を生成する2つのタンパク質(AARとADO)は、静電相互作用により結合すること、その結合に最も重要なアミノ酸残基を同定した。AARはADOと結合することで、水溶性に乏しいアルデヒドをAARからADOへ直接輸送していることを裏付ける結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
標的のアルデヒドを生成する人工遺伝子回路を大腸菌で構築し、標的のアルデヒドの生成量に応じて発光する大腸菌を用いて、アルデヒド生成酵素の変異体ライブラリから高活性変異体の取得を進めていた。しかし、2020年度に入り、新型コロナウイルスの感染状況が悪化したため、感染予防措置として、研究室の閉鎖、あるいは、研究室滞在時間の短縮を余儀なくされ、当初予定していた研究を十分に進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
大腸菌で標的のアルデヒドを生成する人工遺伝子回路を構築し、このアルデヒドを基質として発光する酵素を共発現し、標的アルデヒドの生成量に応じて発光する大腸菌を構築する。組み込んだ人工遺伝子回路のうち、アルデヒド生成酵素の活性に応じて発光する条件検討を行う。その条件下において、アルデヒド生成酵素の変異体ライブラリを作製し、高発光変異体を取得することで、高活性アルデヒド生成酵素の創出を行うことで、大腸菌内での標的アルデヒドの生成量(アルデヒド生成酵素の活性)を外部から非侵襲的、かつリアルタイムに評価できる革新的な本技術の実証を行う。
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Causes of Carryover |
東京でも新型コロナウイルスの感染状況が悪化し、数ヶ月による大学と研究室の閉鎖と研究室の滞在時間の抑制のため、研究時間が大きく低下した。そのため、科研費の延長申請を行ったため、次年度への使用額が生じた。
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Research Products
(11 results)