2020 Fiscal Year Research-status Report
Properties of novel microorganisms and enzymes involvedin marine polysaccharide degradation for utilizing marine biomass
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18K05392
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
大城 隆 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (00233106)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八木 寿梓 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (10432494)
鈴木 宏和 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (80462696)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フコイダン / 海藻多糖分解酵素 / 脱硫酸化酵素 / アミロイド |
Outline of Annual Research Achievements |
オキナワモズクフコイダン分解菌、Luteolibacter algae H18 よりフコイダン脱硫酸化酵素を精製し、ゲノム情報から遺伝子を同定した後、大腸菌で異種発現させ、51 kDaの精製タンパク質を得た。アミノ酸配列を検討した結果、既知のフコイダン脱硫酸化酵素とは異なり、本酵素はスルファターゼよりむしろホスファターゼの一種PhoDに類似していた。酵素活性の評価を行ったところ、本酵素はフコイダン脱硫酸化活性だけでなく人工基質p-ニトロフェニルホスフェート(pNPP)に対する活性を有していた。しかし、p-ニトロフェニルサルフェートに対する活性は認められなかった。また、H18株と同属同種のオキナワモズクフコイダン分解菌株、L. algae SWの遺伝子中にフコイダン低分子化遺伝子を検索し、候補遺伝子を大腸菌で発現させ、フコイダン低分子化活性を確認した。本酵素の諸性質を検討し、H18株の酵素と比較した。 オキナワモズフコイダンおよびそれを上記酵素により脱硫酸化したフコイダン、ならびにH18株の粗酵素により低分子化、脱硫酸化したフコイダンを調製し、それらによるインスリンのアミロイド線維形成の阻害活性について検討した。その結果、全てのサンプルにおいて阻害効果が認められたことから、フコイダンは低分子化かつ脱硫酸化してもアミロイド線維形成阻害能を有していることが示唆された。 昨年度、海藻分解活性を有する好熱菌、Geobacillus thermodenitrificans OS27に糖加水分解酵素としてはあまり報告の無い2種のタイプの遺伝子を見出し、これら発現産物がある種の糖に対して活性を有することを確認した。これら2つの遺伝子の破壊株を作成したところ、破壊株においても野生株同様、キシランの資化能が見られたことから、本菌株は新規なキシラン分解酵素を有する可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Luteolibacter algae H18が有するフコイダン分解に係る酵素について、本プロジェクトを開始する前は、脱アセチル化に関与する酵素のみ見出していたが、本プロジェクトを開始後今までに、低分子化酵素および脱硫酸化酵素の2つを新たに明らかにすることができた。そのうち本年度は、脱硫酸化酵素の検討を行ったが、その過程で、本酵素がフコイダンの脱硫酸化だけでなく、pNPPの脱リン酸化活性を示すという興味深い知見を得ることができた。 このように、フコイダン分解に関与する酵素を一部解明できたため、本研究課題は順調に進展している考えている。ただ、今回見出した酵素以外にフコイダン脱硫酸化酵素が存在することが明らかになったため、今後、本菌株のフコイダン代謝の全貌をつかむためには、さらなる検討が必要と思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回見出されたフコイダン脱硫酸化酵素を作用させても、H18株が遊離できる硫酸基の20%ほどしか硫酸基を遊離することはできないことが明らかになった。このことは、H18株が別の脱硫酸化酵素を生産していることを意味する。H18株はフコイダンを炭素源とした場合、フコイダン脱硫酸化酵素を生産するが、グルコースを炭素源にすると生産しない。そこで今後、H18株のRNAシークエンスを行い、フコイダンを炭素源とした菌体において特異的に発現する遺伝子を検索し、新たな脱硫酸化酵素の同定を試みる。 さらに、すでに単離しているフコイダン低分子化酵素はオキナワモズクフコイダンを低分子化できるがアカモクフコイダンには作用しない。しかし、H18株はアカモクフコイダンを資化し、低分子化する。そこで、H18株からアカモクフコイダンを低分子化できる酵素を新たに精製し、その遺伝子同定、異種発現、酵素化学的諸性質検討を実施し、オキナワモズク低分子化酵素との比較を行う。
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Causes of Carryover |
学会出張等がコロナ禍のためできず、旅費が発生しなかった。 また、遺伝子工学的実験が想定より順調に進んだため、消耗品の支出を抑えることができた。ただ、今後対象とする遺伝子を増やす予定にしているため、遺伝子工学用試薬の購入額が増加する見込みであるとともに、酵素精製のためのカラム、酵素反応の基質として高価な試薬の購入も予定している。
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