2021 Fiscal Year Research-status Report
Properties of novel microorganisms and enzymes involvedin marine polysaccharide degradation for utilizing marine biomass
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18K05392
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
大城 隆 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (00233106)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八木 寿梓 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (10432494)
鈴木 宏和 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (80462696)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フコイダン / 海藻多糖分解酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
新たに単離したオキナワモズクフコイダン分解菌、Flavobacterium sp. SW 株のゲノムDNA中に、当研究室で見出したフコイダン分解酵素遺伝子Fct114および、他のグループによって見出されているGH107あるいはGH168に分類されるフコイダン分解酵素をコードする遺伝子を探索した。その結果、Fct114と相同性の高い遺伝子swfctおよび、GH107に類似したswfcn1、swfcn2、GH168に類似したswfun1、swfun2、swfun3の合計6つの遺伝子が見い出された。これら遺伝子を大腸菌で異種発現させたところ、swfct、swfcn2、swfun1に発現が見られ、大腸菌の可溶性画分にタンパク質の生産が認められた。Swfct、Swfcn2、Swfun1の生産が見られた大腸菌の粗酵素液を用い、各種フコイダンを基質にした酵素反応を行ったところ、Swfctではオキナワモズクフコイダンからアセチル基を遊離させた脱アセチル化フコイダン、Swfcn2ではガゴメコンブおよびオオウキモフコイダンの低分子化がHPLCを用いる方法により認められ、それ以外のフコイダンに対する低分子化活性は検出できなかった。一方、Swfun1 はどのフコイダンに対しても、分解活性は検出できなかった。Swfctは、酵素反応によって生じる還元末端を定量することができ、この方法により、オキナワモズクフコイダンに対する活性は、脱アセチル化フコイダンに対する活性の10%程度であることがわかった。しかし、Swfcn2は、還元末端を検出することができず、酵素反応液を電気泳動し、酸性糖に特異的に反応する色素であるアルシアンブルーを用いる方法で低分子化を定性的に評価することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Flavobacterium sp. SW 株に複数のフコイダン分解酵素遺伝子が見い出すことができ、そのうちの2つについて、酵素活性が確認され、基質特異性が明らかに異なることを示すことができた。以上の成果は、研究に着手する前は、どのようになるかわからない点であったため、満足のゆく成果が得られたと考えている。今回検討を行った酵素Swfctは、当研究室で以前見い出したFct114を基に見い出した酵素であるが、Fct114がオキナワモズクフコイダンに対する活性が脱アセチル化フコイダンに対する活性の半分程度であるのに対し、Swfctは10%程度と、基質特異性に違いが見られた。Fct114に類似した酵素は、我々の研究室でしか見出されておらず、Swfctの特性を明らかにできたことから、フコイダン分解のレパートリーを増やすことができたと考えている。一方、もう一方の酵素Swfcn2は、SW株が単一炭素源として生育することができないガゴメコンブフコイダンに作用する酵素である。このことは、SW株は、ガゴメコンブフコイダン分解酵素遺伝子を有しているが、ガゴメコンブを資化できないことを意味しているとともに、SW株が異なる種のフコイダンに対して潜在的な分解能を獲得しているのではないかと考えさせる。すなわち、ただでさえ貧栄養状態である海洋に生育する微生物は、海藻の種が違うため化学構造が異なるフコイダンに対応する遺伝子を潜在的に有している推察されるに至ったことは、今回の大きな成果であると思える。
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Strategy for Future Research Activity |
Flavobacterium sp. SW 株に見出された6つのフコイダン分解酵素遺伝子候補のうち、3つについては異種発現がうまくいっていない。これらの発現検討を行い、生産された酵素の特性を解明し、本菌株のフコイダン資化能について検証を行う。 Fct114は当研究室で単離したフコイダン分解菌株 Luteolibacter algae H18から見出された酵素である。そこで、SW株と同様、H18株についてもGH107あるいはGH168に分類されるフコイダン分解酵素をコードする遺伝子を探索し、候補遺伝子が見い出された場合、遺伝子発現、生産された酵素の特性解明を実施する。そして、SW、H18両方の種々のフコイダンをはじめとする海藻多糖の資化能およびフコイダン分解酵素について比較検討し、それらの結果を踏まえたうえで、自然環境中に存在する海藻多糖の分解様式について仮説を提唱する方向で研究を推進する。 一方、当研究室では新たにアカモクフコイダン分解微生物を単離することができた。この菌株についてアカモクフコイダン以外の資化可能な炭素源を海藻多糖から検索し、全ゲノム解析を実施したうえで、菌株の同定、分解に関与する候補遺伝子の特定、遺伝子発現、機能解明を実施していく。
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Causes of Carryover |
学会出張等がコロナ禍のため実施できず、旅費が発生しなかった。 遺伝子工学実験が当初予定よりも順調に進んだため、消耗品の支出は想定より少なく済んだ。ただ、今年度は対象とする遺伝子をさらに増やした実験を計画しており、遺伝子工学用の試薬購入額が増加する見込みであるとともに、高価な酵素反応の基質、ならびに分析用HPLCカラムの購入も予定している。
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