2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K05409
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
池田 正人 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (00377649)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹野 誠記 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (30422702)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | コリネバクテリウム グルタミカム / 中鎖脂肪酸 / 脂肪酸合成酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
【中鎖生産の戦略1:脂肪酸合成酵素Fasの改変】コリネ菌は2種のFasを有する(FasAとFasB)。これらFasの改変により長鎖生産菌を中鎖生産菌に転換できないかを検討。Fasの阻害剤セルレニン耐性株を誘導すると、その中に長鎖を生産できない変異株が出現。内2株がfasA遺伝子の鎖長伸長反応を担うドメイン内に同一変異を有すること判明。同2株は親株が生成しない中鎖をごく微量ながら生成。本結果は、FasAの特定の変異が狙いとする代謝変換につながることを示唆。
【戦略2:枯草菌BioI酵素の利用】枯草菌は、長鎖(CoA体)を開裂してビオチン合成基質ピメロイル-CoA(C7)を供給する酵素を持つ。本BioI反応では副産物として中鎖脂肪酸が生成している可能性がある。同遺伝子をコリネ菌の長鎖生産菌で発現させ、中鎖生成が起こるかを検証。発酵液を分析した結果、ピメロイル-CoA生成に伴い、コリネ菌が本来生産しないノナン酸(C9)の生成を認めた。本結果は、BioI依存的な中鎖生産の可能性を示す。
【戦略3:リポ酸の炭素骨格C8の供給ルートの解明と利用】我々は、リポ酸の炭素骨格(C8の中鎖オクタノイルCoA)が、コリネ菌ではFasBで合成されていることを見いだす(Ikeda et al. AEM 2017)。しかし、FasB破壊株がオクタン酸(C8)の完全要求性ではなくリーキー形質を示すことから、C8供給には別のバイパスが潜むことが示唆。その候補として「長鎖脂肪酸→オクタン酸(C8)への開裂→オクタノイルCoAへのCoA化」と2段階で進むルートを想定。その後段反応へのアシル-CoAシンセターゼ(FadD)の関与を検証。ゲノムに4種存在するFadDホモログに着目し、増幅と破壊の影響をFasB破壊株ベースで解析。その結果、少なくとも2種(fadD1とfadD15)がバイパスに関与する可能性を掴んだ。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究実施計画では以下の3点を掲げた。3点とも計画通りに実施して、今後の課題と方向性を明確にできたと判断できるため。
1.中鎖生産の戦略1:脂肪酸合成酵素Fasの改変 2.中鎖生産の戦略2:枯草菌BioI酵素の利用 3.中鎖生産の戦略3:リポ酸の炭素骨格C8の供給ルートの解明と利用
|
Strategy for Future Research Activity |
【中鎖生産の戦略1:脂肪酸合成酵素Fasの改変】長鎖生産菌から誘導したセルレニン耐性株は長鎖の代わりに中鎖を生成するが、その生成量はごく微量で、長鎖から中鎖への定量的な発酵転換は成立していない。その原因を、中鎖CoA体の脱CoA化反応がネックになっているためと推察。この可能性を検証するため、本株で中鎖型チオエステラーゼを発現させ、中鎖の生産量が高まるかどうかを調べる。中鎖型チオエステラーゼ遺伝子の候補としては、まずは大腸菌の遺伝子を試す。
【戦略2:枯草菌BioI酵素の利用】枯草菌のBioIをコリネ菌の長鎖生産菌で発現させることで、ノナン酸(C9)の生産が起こるが、この場合も生産量は微量である。従って、今後はBioI反応の改善が不可欠である。以下の2点からその検討を行う。①BioIの質的/量的改変、②BioI反応に適した基質(長鎖CoA体)の探索と同基質を生産できる宿主の開発。
【戦略3:リポ酸の炭素骨格C8の供給ルートの解明と利用】C8供給に潜むバイパス経路にアシル-CoAシンセターゼ(FadD)の関与が示唆されたことから、関わるfadD遺伝子を特定する。具体的には、FasB破壊株ベース(リポ酸リーキー形質)で4種のfadD様遺伝子を順次破壊し、表現型への影響を調べる。一方、上記仮説ルートの前段反応(長鎖の開裂)に、ラッカーゼ様酵素(ゲノムに2種のラッカーゼ様遺伝子あり)が関わっている可能性を検証する。
|
Remarks |
研究者総覧 池田正人 http://soar-rd.shinshu-u.ac.jp/profile/ja.uhLNPUkh.html?lng=ja&id=uhLNPUkh
|