2018 Fiscal Year Research-status Report
大腸菌のバイオフィルム形成及びバイオフィルム内細胞死制御因子の解明
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18K05413
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
山口 良弘 大阪市立大学, 複合先端研究機構, 特任准教授(テニュアトラック) (00737009)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | biofilm / Toxin-antitoxin system / endoribonuclease |
Outline of Annual Research Achievements |
Toxin-antitoxin (TA) system は、原核生物の自殺遺伝子制御システムで、細胞のストレス耐性に寄与する。バイオフィルムは物体表面に付着した微生物の集合体で、細菌の運動はバイオフィルム形成に重要である。我々はMqsR-TgiT TA systemのYgiT antitoxinが、が運動性を誘導しバイオフィルム形成を促進することを見出した。本研究では、MqsR-YgiT TA systemによるバイオフィルム形成制御機構を解明することを目的とした。 本年度は、YgiTによる運動性促進機構を解明するために、YgiT発現後のcurli繊毛の発現量解析およびYgiTを介した運動性制御に関与する遺伝子の同定を試みた。アミロイド繊維 curli 線毛の発現が YgiT によって抑制されることを利用し、YgiT によって curli 線毛発現が抑制されない変異株の取得を試みた。EZ-Tn5 トランスポゾンを用いてランダム変異ライブラリーを作製し、YgiT 発現後、curli 線毛量が抑制されない変異株を選択し、トランスポゾンの挿入部位を同定した。しかし、特定の遺伝子は同定されなかった。そこで、curli繊毛の発現がYgiTによって本当に制御されているか確認した。curli繊毛発現のマスター制御因子であるcsgD欠損株を用いてYgiT発現後の運動性を解析した結果、csgD欠損株でも野生型株と同様にYgiTによる運動性の促進が確認できた。よって、当初の予想とは異なり、curli繊毛はYgiTによる運動性促進に関与しないことが示唆された。現在、yeast two hybrid システムを用いて YgiT と相互作用するタンパク質を探索を試みようとしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定した実験をおおむね予定通りに行うことができた。YgiTを介した運動性に関与している遺伝子のスクリーニングには当初の予定通りにトランスポゾンを用いたランダム変異ライブラリーを用いる方法と、新たにゲノムライブラリーを用いる方法の二つを採用し解析を進めている。 また、今後の実験に必要となる欠損株に関しても作成が終了した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、YgiTによる運動性促進に関与する遺伝子が同定され次第、同定された遺伝子のプロモーターをレポーター遺伝子 (lacZ) と融合させ、YgiT 発現後の転写活性を解析する。複数の遺伝子が同定された場合、それぞれの遺伝子がどのように情報を伝達するのかを、yeast two hybrid およびyeast one hybrid システムを用いて解析する。 また、MqsRを介したバイオフィルム内の細胞死を観察するためにLive/Dead染色および共焦点顕微鏡を用いた実験系を確立し、MqsRがバイオフィルム内細胞死に関与しているか解析する。MqsRの欠損によりバイオフィルム内細胞死が減少した場合、MqsRを相補し、細胞死が間違いなくMqsRに起因するか確認する。 時間が許せば、MqsR-YgiT がバイオフィルムの持つ強いストレス耐性に関与するか、Live/Dead 染色後共焦点レーザー顕微鏡を用いて生菌および死菌を観察し、解析する。野生型株と欠損株で薬剤耐性に差が見られた場合には、欠損株のゲノム上に mqsR、ygiT または mqsRygiT を相補し、確認を行う。
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Causes of Carryover |
物品に関して、プレートリーダーの購入を申請したが、本課題とは別の研究課題を共同で行っている研究室のものを使用できることができるようになったため、今年度の執行を見送った。その他申請した物品は予定通り購入した。来年度以降の実験計画に変更はない。生じた予算は実験系確立のために当初の予想よりも必要量が多くなると予想される蛍光試薬の購入などに使用する予定である。
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