2020 Fiscal Year Research-status Report
中等度好熱菌に比肩する高温耐性を獲得した常温性シアノバクテリア適応進化株の解析
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18K05416
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
兼崎 友 静岡大学, グリーン科学技術研究所, 特任助教 (70380293)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | シアノバクテリア / 高温ストレス / 適応進化 / 突然変異 / 次世代シーケンサー / トランスクリプトーム |
Outline of Annual Research Achievements |
微生物が自らの生育限界を超えた環境条件に適応進化するためには、どれほどの時間と突然変異の累積が必要なのか、というのは生物進化における根源的な疑問の1つである。このような研究は様々な技術的制約・時間的制約のために、実施するのは極めて困難であったが、この15年のゲノム解読技術の急速な発展により、実験室レベルでこうした適応進化実験への挑戦や全ゲノムレベルでの解析が急速に進んできている。 シアノバクテリアSynechococcus elongatus PCC 7942は常温・淡水性のモデルシアノバクテリアである。生育上限温度である43℃以上の温度では細胞は分裂異常によりフィラメント状になり、細胞増殖は抑制される。我々はこのシアノバクテリアを研究材料に、長期高温培養による適応進化実験を継続しており、生育限界温度を超えた適応進化株の取得に成功し解析を進めている。 引き続き長期恒温培養をおこなっている細胞を経時的に全ゲノムリシーケンス解析し、さらなる累積的な突然変異の蓄積を確認できた。培養初期に劇的な生育限界温度の上昇が起きて以降はそのような急激な変化は観測されていないが、集団内で固定化される新規突然変異の数は着実に増え続けており、フィットネスの向上が進んでいる可能性が示唆されている。変異遺伝子の機能解析については、遺伝子破壊株を用いた生育解析やトランスクリプトーム解析により進めている。適応進化株において至適生育温度のトレードオフが起きたかどうかについて検証実験をおこない一定の成果を得た。これらの結果について今後さらに追試と詳細な条件検討をおこなう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新規株の変異同定解析などは順調に進んでいる。しかし新型コロナウイルスCOVID-19の国際的流行により、参加予定であった学会の中止や一部の消耗品の納品が大幅に滞る状況が発生した。これにより予定していた年度末の出張計画や条件検討する予定であった高温ストレス耐性実験の研究計画が影響を受けた。
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Strategy for Future Research Activity |
新たに確立した新規培養ラインの解析結果から、多様な適応進化株の取得が可能であることが分かってきた。これらの新規株について解析を進めることでより多角的な視点から高温耐性獲得のメカニズムを考察できる。また細胞の微細構造や遺伝子組換え株についてのデータを追加することでより詳細なデータを揃えてこれまでの結果を取りまとめる計画である。また現在進めている変異株を用いたRNA-seq解析の結果を詳細に比較し、個々の突然変異の影響を転写産物レベルで確認することで計画をさらに進めることが可能と想定している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスCOVID-19の国際的流行による学会や研究集会の中止により、予定していた出張計画に大幅な変更が生じたため次年度に予算を繰り越した。次年度もCOVID-19の影響から出張計画に大きな影響が生じることが予想される状況であることから、実験に使用する消耗品や雑費などの費目に振り替えるなどして適切かつ柔軟な対応により予算執行する計画である。
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