2018 Fiscal Year Research-status Report
麹菌における小胞体に関連したタンパク質分解機構の解明
Project/Area Number |
18K05422
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
菊間 隆志 立命館大学, 生命科学部, 助教 (90553842)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | タンパク質品質管理機構 / 麹菌 / オートファジー |
Outline of Annual Research Achievements |
麹菌Aspergillus oryzaeは我が国の発酵・醸造産業に欠くべからざる糸状菌であり、近年では異種有用タンパク質の生産宿主としても利用されている。以前に我々は、麹菌において高次構造のとることのできない分泌タンパク質を過剰発現させると、小胞体に蓄積した後、オートファジーで分解されることを見出した。また、オートファジーが起こらないようにすると異種タンパク質の生産性が向上することを発見した。これらのことは、麹菌のタンパク質の分泌生産において、小胞体でのタンパク質品質管理(ERQC)が重要な鍵となる可能性を示唆している。さらに、多核細胞からなる麹菌は、細胞内のある特定の核を丸ごとオートファジーによって分解することが観察されている。核膜および小胞体は連続的であるため、ERQCにおける核のオートファジーの関連が示唆される。本研究では、麹菌におけるERQCの理解を目指し、その分解経路である小胞体関連分解(ERAD)およびERQCオートファジーの分子メカニズムの解明を目的とした。 本年度は、ERQCオートファジーに関連する分子の同定を目指し、麹菌のオートファジーにおいて中心的な役割を担うタンパク質AoAtg8に結合する因子を探索するための麹菌株の作製を行った。AoAtg8のプロセシングに関与するAoatg4遺伝子の破壊株において、AoAtg8のC末端側にTandem affinity purification(TAP)タグを融合したタンパク質(AoAtg8-TAP)を発現する株およびコントロールとしてTAPタグのみを発現する株を作製した。次年度はこれらの株を用いてAoAtg8に結合する因子をTAP法により精製し、質量分析を行うことによって同定する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度より所属が変わり、麹菌研究のための実験設備、菌株および試薬類の調達に時間がかかっため、やや遅れていると判断した。しかし、研究に必要な菌株の作製は完了しており、研究自体は全体として順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に作製したAoAtg8-TAP発現株およびTAPタグ発現株から、TAP法を用いてAoAtg8結合タンパク質を精製し、質量分析により同定を行う予定である。得られたタンパク質の中から、小胞体および核に局在が予想されるもの、AoAtg8結合配列を有するものを抽出し、局在解析および破壊株の表現型解析を行う。 また、出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeのERADにおけるN型糖鎖のマンノーストリミングに関与する1,2-αマンノシダーゼMns1, Htm1, Mnl2の生理機能の解析を行う予定である。これらのタンパク質をコードする遺伝子の破壊株を用いて、人工N型糖鎖基質に対するマンノーストリミングのプロファイリングおよび遺伝子破壊株の性状解析を行う。さらに、ヒト1,2-αマンノシダーゼ様タンパク質EDEMsのマンノシダーゼ活性の検出を試みる。
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Causes of Carryover |
本年度は所属変更に伴い、研究環境整備に時間がかかり、当初予定していた質量分析を行うことができなかったためその経費分として次年度使用額が生じた。次年度において、質量分析の経費、またそれに伴う試薬、プラスチック製品などの消耗品購入に使用する予定である。
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