2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K05424
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
福田 展雄 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (00613548)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 酵母 / 倍数体 / 遺伝子発現 / DNA修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では出芽酵母を宿主として選定し、高次倍数体におけるゲノム安定性向上の実現可能性を検証することを目的とする。相同組換えには複数の経路が存在し、全容解明には未だ至っていない。そこで相同組換えDNA修復の寄与度を明らかにするため、主要遺伝子の発現量とDNA修復エラー発生率の関係を調査することとした。 平成31年度/令和元年度は、各主要遺伝子の発現量を変動させることが可能な一倍体酵母を織り交ぜて掛け合わせを行い、それらの組み合わせにより二倍体の菌株を作製した。前年度に確立した手法を用いて、最も不安定な染色体であるとされる第三染色体の挙動を追跡した。培地組成による影響を調査するため、各条件で培養した酵母細胞において、DNA修復エラー(染色体の喪失およびヘテロ接合性の消失)の発生比率を定量的に評価した。 また当年度および前年度に作成した各倍数体の酵母は、それらのゲノム中にロイシン合成酵素遺伝子を1コピーのみ保有している。定量PCRを実施することにより、ロイシン合成酵素遺伝子をリファレンスとして、性決定遺伝子のコピー数を相対定量することにより、各酵母菌株の倍数性を確認した。 さらに相同組換えDNA修復にかかる各主要遺伝子の発現量を定量するため、酵母細胞からのmRNAの抽出と逆転写によるcDNAの作製を行った。精製後のmRNAサンプルにゲノムDNAが残存していないことをPCR法により確認した。野生型の二倍体酵母から得られたcDNAサンプルを用いて、定量PCRの条件検討を行い、リファレンスとして使用する遺伝子の絞り込みを行った。野生型の二倍体酵母を異なる培地条件で培養し、それぞれ得られたcDNAサンプルを用いて定量PCRを実施して、各遺伝子発現量の比較を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成31年度/令和元年度は開始当初の計画に記した通り、遺伝子発現量の相対定量方法の確立と、一倍体酵母を掛け合わせて各主要遺伝子の発現量調節が可能な二倍体の菌株を作製することに成功した。実験結果を勘案して、今後の研究計画に多少の修正が発生したものの、平成31年度/令和元年度までの計画はおおむね順調に進展しているものと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度(最終年度)は、前年度までに作製した各倍数体の酵母を用いて、相同組換えDNA修復にかかる各主要遺伝子の発現量を評価する。ハウスキーピング遺伝子の発現量を基準とした相対定量を実施して、各倍数体ならびに各培養条件間においてそれらの数値を比較する。さらに培地組成がDNA修復エラー発生に及ぼす影響を調査するため、関連遺伝子の発現量を調節することが可能な菌株を新たに作製して、前年度までに確立した分析手法を用いた評価を実施する。各主要遺伝子の発現量を定量することで、全DNA修復エラー(ヘテロ接合性の消失および染色体喪失の合計)を最小化する条件を検討し、高次倍数体育種におけるゲノム安定性の向上を目指して本研究を推進する。
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Causes of Carryover |
平成31年度/令和元年度は本研究課題の基盤となるDNA複製エラー検出手法を確立するため、研究補助員(6人月)を雇用して計画を遂行することを想定していたが、人材の雇用が叶わず人件費および関連費用(消耗品費等)を執行することができなかった。しかしながら本年度4月より研究補助員(12人月)の業務従事が開始しており、その人件費および関連費用に繰り越し金額の一部を充当する。また研究開始当初の計画では想定していなかった菌株の作製や条件検討等が発生したため、計画の実現性を高めるために物品費等の補強等を含めて検討する。さらに今後の研究進行状況に応じて柔軟な執行に努める予定である。
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