2021 Fiscal Year Research-status Report
コリネ型細菌による転写後制御によるアミノ酸生産への影響
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18K05425
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Research Institution | Research Institute of Innovative Technology for the Earth |
Principal Investigator |
田中 裕也 公益財団法人地球環境産業技術研究機構, その他部局等, 主任研究員 (40754247)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | コリネ型細菌 / RNase / 転写後制御 / アミノ酸 / リジン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではアミノ酸等の工業生産に広く利用されるコリネ型細菌について、RNA分解制御を中心とした転写後制御の研究を進めることでアミノ酸代謝系遺伝子の発現制御を解明し、その知見を利用しアミノ酸生産向上を検討していくことを目標としている。 リジン生合成経路のdapAとRNase JをコードするrnjはdapA-rnjオペロンとして転写され、dapA-rnj mRNAはRNase JおよびRNase E/Gによって分解制御されることをこれまで明らかにしてきた。今年度の研究ではdapA-rnj mRNAの安定性をノーザンブロット法により解析し、その結果dapA内部の切断をRNAse E/Gが行い、RNase Jは全長dapA-rnjとRNase E/Gで切断されたmRNAの両者の分解に関わることを示し、dapA-rnj mRNAの分解機構を明らかにすることができた。 リジン生合成遺伝子の発現はRNAse Jだけでなく、RNase E/Gによっても制御されていることを昨年までに明らかにした。今年度はrneG遺伝子の破壊によりリジン生合成遺伝子のmRNAが安定化すること、野生株だけでなく、リジン生産コリネ型細菌においてもRNase E/Gによる発現制御が行われていることを確認した。 RNaseに作用し、mRNA分解制御に関わる因子を探索したところ、RNase E/Gと結合するタンパクを見出した。このタンパクは他の細菌のRNA結合タンパクと相同性を有することからmRNAと結合してRNaseによる分解を制御する可能性が考えられる。今後このタンパクが生体内でどのような役割を果たしているのか研究を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、RNaseによるmRNA分解によってアミノ酸生合成遺伝子の発現がどのように制御されているか、そしてRNA分解酵素の制御がどのように行われているのか解明するのを目的としている。アミノ酸生合成遺伝子ではRNase Jがリジン生合成遺伝子の一つdapAとオペロンとして転写されることからリジン生合成遺伝子に着目して発現解析を行っている。現在までの解析から、リジン生合成遺伝子がRNase JとRNase E/Gの2つのRNA分解酵素によってmRNAの分解段階で制御されていることを明らかにした。またこの制御はリジン生産株でも同様に行われていることを確認した。 dapA-rnj mRNAの分解制御の解析から、dapA内部に位置するRNase E/Gによる切断部位を決定し、さらにノーザンブロット解析の結果からRNase JはdapA-rnj全長RNAとRNase E/Gにより切断されたmRNAの両者の分解制御に関わることを示した。RNase Jの発現解析から、RNase Jの機能欠損変異株では低温ストレス条件下で野生株に見られた一過的発現上昇が見られなくなることから低温ストレス下での発現制御にrnj mRNAの自己分解を介した制御が関わることも示した。rnj破壊株は低温ストレス下では生育に遅延が見られており、低温培養では通常よりもRNase Jの必要量が増加していることを示している。以上の結果からリジン生合成遺伝子のRNaseによる発現制御とRNase Jの発現制御の解明を進めることが出来た。さらにRNase E/Gと結合する新規タンパクを見出した。これについては他の細菌との比較からRNA結合タンパクと予想されており、機能解析を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の研究の結果、RNase Jの発現制御機構の解析が進み、リジン生合成遺伝子群に対するRNase J、RNAse E/Gの制御機構について詳細を明らかにすることができた。 アミノ酸生合成遺伝子の発現に対する転写発現制御解析について、次年度はdapA mRNAのRNase E/Gの切断部位に変異を導入しmRNAの安定化を試みる。安定化が観察された場合にはrnjの機能欠損変異と重ね、相乗効果が観察できるか検討を行う。また、これまではリジン生合成遺伝子の発現を観察していたが、リジン排出タンパクについても発現解析を予定している。 次に、RNaseの制御に関し、主要RNAseでありリジン生合成遺伝子の発現にも影響するRNase E/Gについても発現制御解析を行う。具体的にはrnj遺伝子破壊がrneG発現に及ぼす影響を解析する。さらにRNase E/Gの活性部位に変異を導入した株を構築し、活性低下がrneG自身の発現にどのような影響を及ぼすのか解析を進めていく。 今年度の研究からRNAse E/Gと結合するタンパクを見出した。配列比較からRNA結合タンパクと予想されるが、生体内での機能は不明である。今年度はこのタンパクが結合するRNAの標的を探索する。具体的にはタグ配列をN末端またはC末端に付加し、タグ配列に対する抗体を用いた免疫沈降および結合したRNAを次世代シークエンスにより解析することでこのタンパクの標的RNAを決定する。また遺伝子破壊株も作製し、標的遺伝子の発現にどのような影響が見られるか検討していく。 上記の研究を行い、コリネ型細菌におけるアミノ酸生合成遺伝子の転写後制御について2021年度までの研究からさらに発展させていく方針である。
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Causes of Carryover |
世代シークエンスを用いた解析を予定しており、次年度使用額が必要である
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