2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K05434
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
永田 紅 京都大学, 農学研究科, 研究員 (70401213)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 一次繊毛 / ABCタンパク質 / 脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
一次繊毛 (primary cilia) は、我々の身体を構成するほとんどの細胞に存在する細胞膜のアンテナ様の突起構造であり、外部環境(血清の有無などの栄養状態、流れや張力などの力学刺激)を感知して細胞内部に情報を伝達する。一次繊毛の形成異常や機能不全は、網膜色素変性、多発性嚢胞腎、内臓逆位など多様な症状を呈する「繊毛病」を引き起こすことから、一次繊毛の形成機構や機能の解明は臨床的にも重要な課題である。一次繊毛膜には多くの受容体やチャネルが存在するが、一次繊毛膜と細胞体の細胞膜との間には障壁が存在し、両者のタンパク質や脂質組成は異なる。また、一次繊毛膜においても、その先端・軸糸・根元ではタンパク質や脂質組成が異なり、一次繊毛の形成や分解を誘導する刺激によって脂質の局在性が変化する。しかし、それらの分布を制御する機構については不明な点が多い。本研究では、脂質輸送能をもつ膜タンパク質であるABC (ATP-binding cassette) タンパク質に着目して研究を行っている。 令和元年度は、細胞から脂質を細胞外へ運び出すトランスポーターとしての機能、および細胞膜の内葉から外葉へと脂質をフロップするフロッパーゼとしての機能をもつABCタンパク質に注目して解析を行った。マウス線維芽細胞 (MEF) においてこのABCタンパク質をノックダウンしたところ、野生型MEFに比べて一次繊毛の形成率が有意に低下した。発現抑制細胞にABCタンパク質を再発現させると、一次繊毛の形成は回復した。内在性ABCタンパク質が一次繊毛の形成を促進するのか、分解を抑制するのかは不明であるが、ABCタンパク質が一次繊毛の形成・維持に関与することを示唆する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、脂質輸送能をもつABCタンパク質に注目して一次繊毛形成を評価した報告はなく、本研究において、内在性ABCタンパク質の発現抑制細胞株および再発現細胞株を用いた実験により、ABCタンパク質が一次繊毛形成に与える影響をはじめて見出したのは意義深い。また、ウェルシュ菌産生毒素由来プローブD4を用いた染色により、一次繊毛の先端にコレステロールが濃縮していること、ABCタンパク質が一次繊毛膜の先端や軸糸に局在することを観察している。以上、研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
ABCタンパク質が一次繊毛の形成を促進するのか、分解を抑制するのかを明らかにする。また、一次繊毛膜の脂質分布を変化させて分解を誘導する血清刺激を与えたときのABCタンパク質の局在変化を検討する。シアーストレス、浸透圧変化など、一次繊毛が晒される他の生理条件についても検討する。さらに、血清刺激時に一次繊毛の先端が千切れて膜小胞が放出される現象において、ABCタンパク質のフロッパーゼ能が関与するかどうかを解析する。一次繊毛における Sonic Hedgehog (Shh) 伝達経路の活性化受容体 Smoothened のコレステロール修飾状態にABCタンパク質が関わるかどうか検討する。さらに、全反射照明蛍光顕微鏡を用いて、一次繊毛膜上でのABCタンパク質分子の挙動を観察する。以上より、一次繊毛におけるABCタンパク質の機能解明を目指す。
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Research Products
(1 results)