2021 Fiscal Year Annual Research Report
Functional analysis of ABC proteins in primary cilia
Project/Area Number |
18K05434
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
永田 紅 京都大学, 農学研究科, 研究員 (70401213)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 一次繊毛 / ABCタンパク質 / コレステロール |
Outline of Annual Research Achievements |
一次繊毛は、G0期の細胞に存在するアンテナ様の細胞膜突起構造であり、外部環境を感知して細胞内部に情報を伝達するオルガネラである。一次繊毛の形成異常は多様な症状を呈する繊毛病を引き起こすことから、一次繊毛の形成・制御機構の解明は重要な課題である。本研究では、脂質輸送能をもつABCタンパク質に着目して研究を行った。 まず、コレステロール輸送に関わるABCA1について解析した。ABCA1は、ATP加水分解依存的に細胞内のコレステロールやリン脂質を細胞外の脂質受容体apoA-Iへ受け渡し、新生HDLを産生するのに必須の膜タンパク質である。また、ABCA1は脂質のトランスポーターとしてだけでなく、細胞膜のコレステロールを内葉から外葉へとフロップするフロッパーゼとしても機能する。内在性ABCA1をノックダウンしたマウス胎児線維芽細胞を作成して解析したところ、ABCA1ノックダウン細胞において血清飢餓時の一次繊毛形成率が有意に低下した。ABCA1の細胞内局在性の観察から、ABCA1は細胞全体での脂質組成・分布を変化させることで一次繊毛形成に影響を与えたものと示唆された。 一方、コレステロール輸送能をもつ別のABCタンパク質ABCB4をブタ腎臓由来LLC-PK1細胞において一過的に発現させたところ、ABCB4が一次繊毛の軸糸あるいは先端に局在する様子が観察された。また、コレステロールプローブD4染色により、一次繊毛先端にコレステロールが濃縮している様子が観察された。最終年度にはABCB4の本来の主要発現組織である肝臓由来HepG2細胞において検討したが、HepG2細胞において一次繊毛は形成されなかった。今後、胆管細胞(cholangiocyte)において検討する予定である。 これまでに、コレステロール輸送能をもつABCタンパク質に注目して一次繊毛形成を評価した報告はなく、本研究においてABCA1が一次繊毛の形成に関わることをはじめて見出したことは意義深い。
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