2018 Fiscal Year Research-status Report
細胞膜透過性阻害剤を利用した局所的RNA脱メチル化反応の解析
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18K05435
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤原 芳江 京都大学, 高等研究院, 研究員 (90423095)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | RNAの脱メチル化 / 阻害剤 / 細胞膜透過性 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞の発生や機能発現のためには適切な遺伝子発現制御が不可欠であり、エピジェネティクスに加えてRNAの転写後修飾(エピトランスクリプトミクス)が重要な要素として注目されている。神経細胞は複雑なネットワークを形成して様々な入力に応答するうえで遺伝子発現を時空間的に制御しなくてはならず、RNA修飾による局所的翻訳の調節機構の研究が進められている。mRNAに最も豊富に存在するN6-メチルアデノシン(m6A)は可逆的な修飾で、これまでにm6Aによる翻訳調節についての報告があるが、神経突起にはメチル化酵素・脱メチル化酵素の両方ともが存在している。そこで脱メチル化反応が局所的翻訳へ寄与しているのかどうかを、阻害剤を利用して解析することを計画した。 mRNAに対するm6A脱メチル化酵素は2種類存在するため、基質特異性が明確で、かつ細胞透過性のある阻害剤の取得が本研究には必須である。今年度は候補化合物の一次スクリーニングおよび活性評価のアッセイ系構築を進めた。脱メチル化酵素活性のin vitro評価系を立ち上げ、薬理・生理活性物質ライブラリーおよびエピジェネティクス関連化合物ライブラリーのスクリーニングを実施し複数の候補化合物を見出した。同時にin silicoスクリーニングによって示唆された化合物についても阻害活性を検討した。さらにin vivo評価系として、培養細胞のゲノム編集により、それぞれの脱メチル化酵素のノックアウト細胞を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
目的の阻害剤取得のための一次スクリーニングにて、改良を加えるための候補化合物をいくつか見出すことができた。一般にin vitro評価系を利用して、類似の活性部位を有するタンパク質への非特異的作用の少ない化合物を選定することは可能であるが、その後の細胞内でのm6A脱メチル化酵素それぞれに対する特異的阻害効果を具体的に評価した報告はこれまでなかった。今回ノックアウト細胞を作成し新たなツールを得たことは成果であり、今後の研究推進に大いに役立つと期待される。 その一方で、一部のin vitro評価系の構築と神経細胞を使った観察系の構築は完了しなかったので、やや遅れている、とした。
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Strategy for Future Research Activity |
化合物のタンパク質特異性を評価するためのin vitro評価系について、FTO、ALKBH5以外の評価系の構築を完了させる。同時並行で前年度に構築したKO細胞を使ってin vivo評価を行い、神経細胞に投与可能な化合物選択の精度を上げる。 目的の阻害剤を取得するために一次スクリーニングで得た候補化合物と脱メチル化酵素の結合様式をシミュレーションし、酵素特異性を上げるための改良を試みるとともに、細胞膜透過性を高めるためのデザインを行い、二次スクリーニングを進める。また神経細胞の形態観察の系を構築する。
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Causes of Carryover |
スクリーニングのための化合物の購入に物品費の大半をあてる予定にしていたが、連携研究者の協力によってその費用が大幅に削減された。その結果、共通機器利用料の支出もなかったため。 未使用額は今年度の化合物(単品、ライブラリー)購入や、化合物合成のための試薬および共通機器利用料にあてる。
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