2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K05438
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
松尾 安浩 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 助教 (70596832)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 塩ストレス応答 / 細胞周期 / 細胞増殖 / 分裂酵母 / シグナル伝達 / cAMP/PKA経路 / 有糸分裂期 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、PKA経路による細胞周期制御、塩ストレス存在下での制御メカニズムおよびPka1の標的因子同定と解析の3つに関して解明を行った。PKA経路による細胞周期制御に関しては、pka1欠損株が微小管重合阻害剤に感受性を示し、微小管の構造には異常は見られないが、染色体分配に異常があることがわかった。また、PKA活性に依存して微小管重合阻害剤に対して感受性を示していた。これらのことから、PKA経路が有糸分裂期に重要な機能をしていることを明らかにした。塩ストレス存在下での制御メカニズムに関しては、Pka1の下流に位置する転写因子Rst2を欠損させることでpka1欠損株の塩ストレス感受性が抑圧されることがわかった。Rst2の細胞内局在が塩ストレス存在下で顆粒状の局在を示すことを明らかにし、これがPka1によって制御されていることがわかった。Pka1の標的因子同定と解析に関しては、pka1欠損株の微小管重合阻害剤への感受性という表現型を用いて、マルチコピーサプレッサーの単離を試みて、EB1タンパク質であるMal3を単離した。Mal3は、微小管への結合能力を用いて、pka1欠損株の染色体分配異常を抑圧し、結果として微小管重合阻害剤への感受性を抑圧していることがわかった。また、野生株とpka1欠損株でのタンパク質の発現の違いを同定することで新たな標的因子を同定し、解析したところPka1下流の転写因子Rst2を介して転写レベルで発現制御を行っていることがわかった。さらに、Pka1遺伝子の高発現は細胞死を引き起こすため、これを抑圧する因子をEMS変異処理によって単離を試み、6株の抑圧変異体を単離することに成功し、次世代シークエンスによって変異部位の解析を行った。このようにPKA経路による制御機構の解明に進展が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題で計画している4つの項目のうち、初年度に3つの項目に取り組み、それぞれの項目で研究が進んでいる。PKA経路のよる細胞周期制御に関しては、得られた研究結果から新たな仮説も得ることができた。塩ストレス存在下での制御メカニズムは、転写制御の可能性があることを明らかにした。Pka1の標的因子の同定は、Mal3を単離することができ、Mal3がなぜ抑圧できたのかを明らかにした。Pka1高発現下での細胞死を抑圧する変異体の単離では、候補になる変異体を6株得ることができ、次世代シークエンスによって変異部位の解析も行うことができた。また、予定していなかった方法を用いて新たに発現制御されている標的因子を単離することに成功し、解析を進めることができたため、全体として概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究推進方策については、初年度の成果を受け各研究項目別に以下のように進める予定である。 ①PKA経路による細胞周期制御に関しては、Pka1経路が有糸分裂期で染色体分配を制御していることを明らかにしたため、どのような制御を行っているのかの解明を試みる。 ②塩ストレス存在下での制御メカニズムに関しては、転写因子Rst2の欠損株が下流で機能していることを明らかにしたので、どのようにRst2がPka1経路によって塩ストレス存在下で制御されているのかを解析していく。またその標的因子の同定もマルチコピーサプレッサーの単離や転写制御の点から同定を行っていく。 ③Pka1の標的因子の同定に関しては、Mal3に関しては、成果論文として報告を行う。新たに同定した発現レベルで制御されている因子に関しては、その関係性を明らかにし、その因子の機能を解明していく。また、Pka1高発現における6つの変異体に関して、次世代シークエンスによって得られた該当因子が実際に機能的にPka1高発現での細胞死を抑圧できるのかを明らかにしていく。 ④他の分裂酵母での機能の保存性に関しては、研究を開始し、欠損株の作製をおこなっていき、実際に使用している分裂酵母で見られる表現型が保存されているかを解析していく。
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Causes of Carryover |
理由:EMSサプレッサーの変異箇所を同定するために次世代シークエンスを行うことを予定していたが、当初の予定よりも安価に行うことができた。そのため、節約できた予算に関しては、次年度使用額として繰り越すこととした。 使用計画:繰り越し額は、継続して行っているサプレッサーの解析のために使用することを予定している。
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