2022 Fiscal Year Research-status Report
生体認識配糖体生産のための特異的糖鎖遊離酵素の構造解析とその機能開発
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18K05444
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
伊藤 和央 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (20183171)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生体認識配糖体 / エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ / 立体構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度から2021年度の研究において、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼPM(エンドPM)の3つのアイソザイムのうち、エンドPMαの結晶を用いて、つくば高エネルギー加速器研究機構においてX線結晶回析測定を行い、立体構造を明らかにした。そして、エンドPMαは5つの異なるドメインI~Vから構成されていることを明らかにし、それぞれの特徴を解析した。 2022年度は、エンドPMαの結晶状態の立体構造と溶液中の構造の差異を検証するため、低角X線散乱法(SAXS法)によって溶液中のエンドHSの立体構造を解析した。つくば高エネルギー加速器研究機構において、ゲルろ過クロマトグラフィーカラムを用いたSAXS法(SEC-SAXS)によって、以下の条件で測定を行った。測定条件:Light source, PF BL-10C; Detector, PILATUS3 2M; Wavelength, 1.0オングストローム; Exposure time, 20 sec/image; Camera length (Vacuum chamber), 2 m; Buffer solution,10 mM Na, K-PB pH 6.5。 得られた散乱曲線のデータをもとに溶液中のエンドPMαの立体構造を構築したところ、エンドPMαのRgは 33.5 +/- 1.1 オングストローム、RMAX値は129オングストロームとなった。また、ダミー分子で立体構築したところ、極めて非対称性の高い構造をとることが明らかとなった。さらに、得られた実験散乱曲線と結晶構造から計算される理論曲線とを比較したところ、両曲線の違いを示すχ2 値が1.28となり、大きく異なっていた。このためエンドPMαの立体構造は結晶状態と溶液状態ではことなっていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、コロナ禍のため研究時間が制限され、予定していた研究をすべて行うことができなかった。しかし、昨年度の研究によって明らかにしたエンドPMαの結晶状態の立体構造と溶液中の立体構造を比較するために、本年度はエンドPMαの溶液中の立体構造の解析を行い、エンドPMαの溶液中での立体構造を解くことができた。 その結果、エンドエンドPMαの立体構造は結晶状態と溶液中の状態では異なっていることを明らかにすることができた。そして、ドメインIVとVの立体配座が溶液中では異なっている可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の研究において明らかにしたエンドHSのX線結晶構造解析で明らかにした結晶状態の立体構造と溶液中での立体構造と比較するために、低角X線散乱法(SAXS法)によって、溶液中の立体構造を解析する。 また、2021年度までの研究において明らかにしたエンドHSとエンドPMαの立体構造を構成するドメインの機能を解析する。また、本酵素と基質糖鎖の共結晶化の条件を検討し、酵素・基質複合体の結晶を調製する。得られた酵素・基質複合体のX線結晶構造解析を行い、両酵素の糖鎖認識・結合部位と触媒部位を特定する。こうして、これら酵素の糖鎖認識および水分子認識に関わる構造上の特徴を解明し、触媒部位、糖鎖認識・結合部位および加水分解・糖鎖転移部位を特定する。 さらに、エンドHSとエンドPMαを用いた生体認識配糖体の合成と得られた生体認識配糖体の構造および機能解析を行う。 これらの知見をもとに、遺伝子改変によって糖鎖転移合成型酵素を作成し、生体認識配糖体合成率を検証する。また、合成した生体認識配糖体の構造と機能を解析する。さらに、糖鎖認識改変型酵素の作成と各種生物期限糖タンパク質糖鎖の転移導入と糖鎖転移合成型酵素によるバイオ医薬品糖鎖のリモデリングを検証する。
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Causes of Carryover |
今年度も引き続きコロナ禍による研究制限があったため、予定していた研究を行うことができず、使用した試薬や実験器具の量が減った。このため、これらの購入に充てる経費が少なくなり、次年度使用が生じた。 これは、次年度にエンドHSとエンドPMαにおける酵素・基質複合体の調製とそのX線結晶構造解析のための経費に充てる。また、両酵素の各ドメインの機能解析のために必要な物品の購入に充てる。さらに、両酵素のドメインを改変し、糖鎖転移合成酵素に改変るための研究経費に充てる。また、これら酵素および糖鎖転移合成酵素に改変した変異酵素を用いた生体認識配糖体の合成とその構造解析のための物品の購入に充てる。
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Research Products
(11 results)