2019 Fiscal Year Research-status Report
クチクラ強化による種子の長寿命化メカニズムの解明と応用
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18K05447
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
大島 良美 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (00722951)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 種子寿命 / クチクラ / 転写因子 / シロイヌナズナ / クチン |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、LMI2転写因子が種子のクチクラ形成を制御し、種子の劣化耐性に必要であることを明らかにした。LMI2と近縁なクチクラ制御因子MYB106とMYB16はそれぞれ、花器官と葉のクチクラ形成に重要な因子であり、種皮ではほとんど発現しない。これらの種子で発現しない転写因子が種子劣化を抑制できるか検証するため、MYB106, MYB16にそれぞれ強力な転写活性化ドメインVP16を融合しシロイヌナズナで発現させた。T2種子を用いて、種子の劣化試験を行った結果、MYB106-VP16, MYB16-VP16発現種子は、野生型と比較して発芽率の低下が抑えられていた。したがって、花器官タイプや葉タイプのクチクラを優先的に蓄積させる転写因子を用いた場合でも種子劣化を抑制するのに必要なクチクラの性質を付与することが明らかになった。種子劣化の抑制に寄与したクチクラ組成を明らかにするため、MYB106-VP16, MYB16-VP16, LMI2-VP16発現植物からワックスとクチンを抽出し、現在クチクラ組成を比較している。MYB106-VP16, MYB16-VP16植物のクチンの総量は野生型に比べて2~4倍に増加し、この増加は主に各種カルボン酸とポリヒドロキシ酸の増加によるものであった。MYB106-VP16とMYB16-VP16植物の間で顕著な違いは見られなかった。今後はLMI2-VP16植物の組成分析及び、抽出済みのワックスの組成分析と遺伝子発現解析を行うことにより、各種クチクラの形成機構の違いと種子劣化に与える影響を考察する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ニンジンの形質転換を担当するスタッフが交代したため、形質転換がうまくいかない。培養系は担当者によって形質転換効率が変化するので、慣れるまで時間がかかる場合があるのはやむを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
ニンジンについては形質転換が可能になり次第、種皮クチクラ強化を試みる。ダイズについても形質転換が成功したら種子劣化の形質を強化する。 クチクラのどのような成分が種子劣化耐性に重要かを明らかにするため、各種クチクラ制御因子発現種子の劣化試験及び、クチクラの組成分析、下流遺伝子の発現解析を行っている。また、種子劣化の指標として活性酸素種プローブの発現株を作成している。この種子の観察及びその他の劣化の指標を解析することにより、種子の劣化試験前後の活性酸素種発生量等がクチクラ高蓄積によって抑えられるかを明らかにする。以上の解析により、LMI2及びその他のクチクラ形成制御因子が蓄積を誘導するクチクラのどのような組成、性質が種子劣化を抑制するかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
ニンジンの形質転換が担当者抗体のため遅れている。培養系は担当者によって形質転換効率が変わるため、慣れるまで時間を要することはやむを得ない。2020年度、形質転換可能になったタイミングで実施する。各種クチクラ制御因子発現植物のRNA-seqを外注する予定でRNA抽出までは行ったが、RT-PCRによる予備試験により、導入遺伝子の発現量のバラつきが大きいことがわかったためRNA-Seqを延期した。現在、RNA-seqを行うラインを再度選抜している。
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