2019 Fiscal Year Research-status Report
癌の転移と浸潤を抑制するプロアントシアニジン類の合成と化学生物学的研究
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18K05454
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
真壁 秀文 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (90313840)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅澤 公二 信州大学, 総合理工学研究科, 助教 (00609258)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | プロアントシアニジン / 蛍光プローブ / 縮合反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
プロアントシアニジン類は縮合型タンニンの一種であり,抗酸化活性をはじめとする様々な生物活性を有することが知られている。研究代表者はプロアントシアニジン類の優れた生物活性を特異な構造に着目し,合成研究を行ってきたが,その過程でピロガロール基を持つ化合物が顕著な抗腫瘍活性を有することを明らかにしてきた。本年度は,抗腫瘍活性の活性発現メカニズムの解明を目的として,エピガロカテキン2量体を基本骨格とする蛍光プローブの合成に取り組んだ。合成は以下のようにして行った。まず,EGCGを出発物資として,フェノール性水酸基をベンジルエーテルとした後に,加水分解のよりガレート部分を除去してエピガロカテキンベンジル保護体を得た。次に,この化合物の4位にエトキシエチル基を導入後して求電子試薬とし,先の合成したエピガロカテキンのベンジル保護体を求核剤として縮合反応に供した。種々反応を検討した結果,アリルトリメチルシラン存在下でトリフルオロボランエーテルコンプレックスをルイス酸として縮合反応に供したとところ,4’位にアリル基が導入されたエピガロカテキンベンジル保護体の2量体を得ることができた。アリル基が導入できたので,5-hexenoic acidと第二世代Grubbs触媒を用いたクロスメタセシス反応に供したところ,4’位にカルボン酸を持つ側鎖を導入することができた。このカルボン酸部位にfluorescein amineとEDCIとヒドロキシスクシンイミドを用いて縮合反応を行い,エピガロカテキン2量体の蛍光ラベル体の初の合成を達成することが出来た。同様に対照実験用のエピカテキン2量体の蛍光ラベル体の合成も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カテキンやエピカテキンおよび重合体の蛍光ラベル体に関する合成例は,EGCGの1例のみが報告されており,重合体の合成例は報告がない。今回の合成の鍵は,4’位にアリル基が導入されたエピガロカテキンベンジル保護体の2量体の合成であり,種々の反応条件を詳細に検討した結果,達成された。本手法は新規な反応であるとともに,3量体以上の化合物にも適用が期待され,画期的な反応開発と言える。このように蛍光ラベル体の開発が達成できたので,エピガロカテキン2量体の抗腫瘍活性を発現するタンパク質の同定や癌細胞内での結合タンパク質の局在を解明するための可視化が可能となると考えられる。また,FGビーズに関してであるが,fluorescein amineを導入する以前の化合物は遊離のカルボン酸を有しているため,アミノ基を持つFGビーズを用いて標的タンパク質の同定を試みた。しかしながら,なかなかタンパク質の同定に至らなかった。そこで種々検討を行った結果,カルボン酸とアミノ基がうまく結合していないことが分かり,プロトコールを再検討した。その結果,ヒドロキシスクシンイミドを用いて段階的なアミノ化が必要であることが分かった。以上の結果を総合的に判断すると,今後の生物活性発現メカニズムの解明に向けた手法がほぼ確立できたと考えられる。以上のことから本研究は,「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
はじめに,FGビースや蛍光プローブを用いて前立腺癌細胞におけるエピガロカテキンの2量体に結合するタンパク質の同定を行う。同定を行った後は,そのタンパク質が本当に癌細胞の増殖や転移に関連するのかを確認するために,タンパク質をリコンビナント法によって生産し,各種機能解析を行う。また,探索研究代表者と研究分担者の梅澤助教はプロアントシアニジン類の標的タンパク質の検索で計算化学的手法も行っている。ドッキングシミュレーションによると,上記のエピガロカテキン2量体が 癌の原因となる変異型K-Rasタンパク質と相互作用するPDEδに強く結合することが示唆されている。昨年度から引き続き,リコンビナント法によるPDEδの生産に関してPDEδの遺伝子組み換え体(Hisタグ付き)を大腸菌BL21株にて発現し,Niカラム精製まで進んでおり,現在は量的な確保に向けて研究を進めている。精製されたPDEδが十分に確保でき次第,SDS-PAGEを行い,結合試験を行う予定である。FGビースや蛍光プローブ法により同定されたタンパク質と計算化学的手法によりエピガロカテキン2量体が結合すると予想しているPDEδが一致するのかなどを検証して,標的タンパク質の同定を行う予定である。
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Research Products
(1 results)