2019 Fiscal Year Research-status Report
フコイダンがもつ血管新生抑制活性の発現機構解明を指向した構造活性相関研究
Project/Area Number |
18K05455
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
今村 彰宏 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (30610951)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | フコイダン / 糖鎖 / 化学合成 / 構造活性相関 / 血管新生 |
Outline of Annual Research Achievements |
R1年度は、研究実施計画に従って本研究の中核をなすフコイダン分子の化学合成に取り組んだ。特に今年度は、目的とするフコイダンの母核構造である、フコースα(1,3)フコースの繰り返し構造からなる多糖体の構築に注力した。昨年度確立した立体選択的α-L-ガラクトシル化を鍵反応として、まずα-L-ガラクトシドのオリゴ糖を合成した。この際、グリコシル化に用いる供与体を二糖とすることで、効率的に鎖長を伸ばす戦略を立案した。また、供与体の保護基や脱離基の種類も検討し、ガラクトース3位の保護基はアセチル基、脱離基はチオグリコシドとすることで、良好な結果を与えた。さらに、糖鎖伸長後のガラクトース6位のデオキシ化反応を検討し、Barton-McCombie反応の他、6位トシル体をLAH還元する方法が有用であることを見出した。これらの結果、α(1,3)結合したオリゴフコース五糖の構築に成功した。しかし、オリゴ糖でのデオキシ化反応の収率が芳しくなく、反応条件の最適化が新たな課題として浮上した。 一方、多糖であるフコイダンの化学合成においては、当初から、糖鎖長が伸びるに従い有機溶媒への溶解性低下が懸念されていたため、生成物の単離・精製の易化を指向したフルオラスケミストリーの利用を検討した。フルオラスタグは、meso-エリスリトールを骨格として、末端にC8F17を有するアルキル鎖を三本導入したものを選択した。これにp-ヒドロキノンを導入することで選択的脱離が可能なタグとした。そして、これをエチレングリコールリンカーを介して糖鎖還元末端へ導入した。その結果、フルオラスタグを導入したことで、フルオラス固相抽出法(FSPE)による生成物の単離・精製を可能にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度確立した立体選択的α-L-ガラクトシル化を鍵反応として、本年度はまずα(1,3)結合したL-ガラクトシドのオリゴ糖を合成した。この際、グリコシル化に用いる供与体を二糖とすることで、効率的に鎖長を伸ばすことに成功した。また、供与体水酸基の保護基や脱離基を種々検討し、ガラクトース3位の保護基はアセチル基、脱離基はチオグリコシドとすることで、収率よく糖鎖が伸長できることを見出した。また、ガラクトース6位のデオキシ化反応では、昨年度良好な結果を与えたBarton-McCombie反応に加えて、6位トシル体をLAH還元する方法が有用であることを見出した。これらの結果、α(1,3)結合したオリゴフコース五糖の構築に成功した。しかし、オリゴ糖でのデオキシ化反応の収率が芳しくなく、反応条件の最適化が新たな課題として浮上した。 一方、多糖は一般的に、鎖長が伸びるに従い有機溶媒への溶解性が著しく低下し、シリカゲルカラムによる精製の難化を課題とする。そのため、生成物の単離・精製の易化を指向したフルオラスケミストリーの利用を検討した。フルオラスタグは、meso-エリスリトールを骨格として、末端にC8F17を有するアルキル鎖を三本導入したものを選択した。これにp-ヒドロキノンを導入することで選択的脱離が可能なタグとした。そして、これをエチレングリコールリンカーを介して糖鎖還元末端へ導入した。その結果、フルオラスタグを導入したことで、フルオラス固相抽出法(FSPE)による生成物の単離・精製を可能にした。 研究実施計画では、今年度中に一連のフコイダン合成を達成し、HUVECを用いた管腔形成阻害能を検証する予定であったが、目的とする鎖長のフコイダンの創出ができていないため研究の進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた知見を基に、まず分子量5000を超えるフコイダン分子の合成を達成する。そのために、本研究課題で確立した立体選択的α-L-ガラクトシル化を基盤として、α(1,3)結合したL-ガラクトシド20糖の構築を目指す。その後、ガラクトース6位のデオキシ化を検討する。その際、今年度浮上した課題に対応するため、より強力なヒドリド還元剤の利用を検討する。具体案として、LiBHEt3(Super hydride)の効果を検証する。 また、分岐構造あるいは糖鎖の結合位置が異なるフコイダン分子を合成し、フコイダンライブラリーを構築する。 目的とするフコイダン分子の合成後、ヒト臍帯静脈由来血管内皮細胞(HUVEC)を用いて血管新生抑制能を検証する。さらに、鶏胚漿尿膜法(CAM法)により、卵内での血管新生抑制能を検証する。これらの結果より、フコイダンの分子構造と血管新生抑制能との間の相関関係を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、今年度中にフコイダンの化学合成をほぼ終える予定であったが、思うように化学合成が進まず、多くの時間を小スケールでの反応検討に費やした。そのため、大量合成を計画していた当初計画より実際に使用した物品費が大幅に少なくなった。その結果、今年度予定していた大スケールでの合成実験を次年度に実施することとした。計画変更に伴い、今年度物品費として計上していた分を次年度で使用する。
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Research Products
(3 results)