2019 Fiscal Year Research-status Report
特異な生態機構を制御する寄主植物由来超微量多環性天然有機化合物の合成研究
Project/Area Number |
18K05456
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
安立 昌篤 東北大学, 薬学研究科, 准教授 (80432251)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 有機化学 / 合成化学 / 天然物化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、特異な多環性骨格を効率的に合成し、生理活性の詳細が明らかにされていない希少天然有機化合物の収束的な化学合成と系統的な構造活性相関研究を目的としている。具体的には、植物寄生性農害虫であるジャガイモシスト線虫の孵化機構において重要な因子であり、高度に歪んだシクロブタン骨格を含むソラノエクレピンAの合成研究を行う。ソラノエクレピンAは三員環から七員環までの全ての炭素環から構成された非常に特異な化学構造を有している。特に、生理活性発現に必須であると考えられる右側部分は、連続する不斉四級炭素を含み高度に歪んだシクロブタンからなるトリシクロ[5.2.1.01,6]デカン(DEF環)であるため、その合成は極めてチャレジングである。この研究は、申請者が独自に確立した共役付加によるによる4-exo-trig型ラジカル環化反応および橋頭位のラジカルによる炭素ー炭素結合反応を機軸として、高度に多官能基化されたシクロブタンを含む特異な架橋型多環性骨格の効率的な合成法を確立する。また、高度に多官能基化されたシクロブタンを含む特異な架橋型多環性骨格の効率的な合成法を確立する同時に、直線段階数が少ない合成経路を開発して、収束的な合成経路によってソラノエクレピンAおよびその関連化合物(構造単純アナログ)の化学合成による供給を目的としている。さらに、系統的な構造活性相関研究を展開することで、孵化の分子機構解明とシスト線虫駆除剤のリード化合物の創出を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度(令和元年度)では、予め17位に側鎖が導入された環化前駆体を合成した後、前年度に申請者が確立した条件を利用して、ヨウ化サマリウムを用いた4-exo-trig型ラジカル環化を検討した結果、望むトリシクロデカンが良好な収率で得られた。続いて、七員環(C環)構築に必要な右セグメントの合成を検討した。合成したトリシクロデカンの17位側鎖をシクロプロパン化した後、種々の官能基変換によって、高度に多官能基化されたエステルを得た。右セグメントの8位への側鎖導入は、両セグメントの連結と七員環(C環)の構築に必須である。しかし、種々の反応条件を検討したが、8位への側鎖導入には至らなかった。 一方、合成終盤でNozaki-Hiyama-Kishi反応によって両セグメントの連結および七員環(C環)の構築法を検討するため、四環性モデル化合物の合成を試みた。検討の結果、左セグメントとアルケニルトリフラートを用いることでNozaki-Hiyama-Kishi反応は速やかに進行し、カップリング体が良好な収率で得られた。さらに、七員環(C環)の構築は、アミノ酸を用いた分子内アルドール反応によって達成し、望む七員環の構築に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和二年度では、予め8位への側鎖導入された環化前駆体を合成した後、ヨウ化サマリウムを用いたラジカル環化反応を検討し、望むトリシクロデカンおよび右セグメントの合成を計画している。また、アルドール反応の条件検討を行い、七員環の構築法を確率する。その後、両セグメントの連結および七員環(C環)の構築によって、ソラノエクレピンAの全合成を計画している。
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Causes of Carryover |
新たな合成計画に基づき、予め17位に側鎖が導入された環化前駆体を合成した後、ヨウ化サマリウムを用いたラジカル環化反応を検討した結果、望むトリシクロデカンが得られた。しかし、更なる側鎖導入の最適条件化が不十分あることが原因である。 反応の最適化するため、高価な遷移金属試薬などの購入を計画して反応条件や溶媒の種類などを精査する。
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