2019 Fiscal Year Research-status Report
アルコキシメチル基を利用する立体選択的グリコシル化の開発と全合成への応用
Project/Area Number |
18K05462
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鳥飼 浩平 九州大学, 理学研究院, 助教 (20456990)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | グリコシル化 / 固体添加 / 器具 / コック / 嫌気 / 無水 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖鎖は生体内で重要な役割を担っているが,その単離・精製が困難であるため純粋な糖鎖を得るには立体選択的グリコシル化を鍵反応とする化学合成が必要不可欠である.平成30年度に我々は,2位ヒドロキシ基をアルコキシメチル基で保護した糖供与体を用いる1,2-trans選択的グリコシル化法を開発した(Org. Lett. 2019, 21, 1221).さらに我々は,2-O-アルコキシメチル保護糖供与体が,2-O-アシル体より高い反応性を示すことを見出し,これを応用することで,同一フラスコ内で二段階の反応を一挙に行うワンポット連続グリコシル化法の開発にも成功した. 平成31年=令和元年度初頭には,予定通り,糖供与体の2位以外のヒドロキシ基にアルコキシメチル基を導入し,それによる遠隔隣接基関与を検討したが,顕著な遠隔隣接基関与はおそらく起きておらず,結果としてグリコシル化の高い立体選択性は発現しないことが明らかになった.そこで前年に開発した方法論を天然物の全合成に適用するという,次の研究課題に着手することにした. 天然物合成に移る前に,のちに問題になりそうな反応の再現性の問題を解決しておくことにした.すなわち,本グリコシル化反応では,固体活性化剤を添加する際,低温(-78 ℃)下で一瞬ではあるが系を開放していたため,まれに空気中の湿気の混入による,副反応(加水分解)が進行してしまい,目的物の収率の低下につながることがあった.そこで空気のコンタミを起こさずに少量の固体を添加できるコック(実験器具)を考案・開発し,グリコシル化反応に適用してみた.その結果,グリコシル化反応の再現性が劇的に向上した.(本器具を用いた場合,一度も失敗例なし.) 本研究成果はSynlett誌の表紙を飾り,二か月連続でアクセスランキングTop 10入りを果たした.また国際特許(PCT)出願も行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遠隔隣接基関与が起こらなかったことは予想外で,残念でもあった.一方,考案した実験器具が非常によく副反応を抑えてくれ,再現性の担保に劇的な効果があった点を加味すると,予想外の結果同士は帳消しであろう.むしろ器具に関して著した論文の波及効果や,今後取り組む予定の(失敗できない)天然物合成で再現性が担保されること,は大きなプラス要因であると考えられるので,概ね順調と評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
計画通り天然物の全合成に本方法論を応用してゆく.計画書では単発の1,2-transグリコシル化の応用計画にとどまっていたが,現在,平成30年に見出したワンポット連続グリコシル化法を生かした合成研究を展開すべく,計画を練り直している.
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Causes of Carryover |
今年度は考案・開発した器具と,既存の薬品を利用して研究を推進したため,物品費が予定を下回り,結果として少額の次年度使用額が生じた.次年度は全合成研究に入るため物品費の増加が見込まれ,次年度使用額も14万円程度なので,次年度はほぼ予定通りの使用となると考えている.
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Research Products
(17 results)