2020 Fiscal Year Research-status Report
アルコキシメチル基を利用する立体選択的グリコシル化の開発と全合成への応用
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18K05462
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鳥飼 浩平 九州大学, 理学研究院, 助教 (20456990)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | グリコシル化 / 固体添加 / 器具 / コック / 嫌気 / 無水 / 隣接基関与 / アルコキシメチル基 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度に我々は,2位ヒドロキシ基をアルコキシメチル化した糖供与体を用いる1,2-trans選択的グリコシル化法,およびその応用として,ワンポット連続グリコシル化法の開発に成功した.平成31年度=令和元年度には糖供与体の様々なヒドロキシ基にアルコキシメチル基を導入し,それらをグリコシル化反応に付すことで隣接基関与による立体選択性が発現するかを検討したが,アルコキシメチル基を2位以外に導入しても,あまり顕著な選択性を示さないことがわかってきた.令和元年度後半には,グローブボックスを用いずとも,低温下,不活性ガス雰囲気を壊すことなく固体試料を添加できる器具を考案・開発した.これによりグリコシル化反応の再現性は劇的に向上した.
令和2年度はこれらの知見を活かし,いよいよ全合成研究に着手する予定であったが,年度当初からの新型コロナウイルス感染拡大の影響で,年度末まで実験研究を完全にストップせざるを得なかった.これは代表者が感染症重症化リスクの高い持病を抱えているため在宅勤務を余儀なくされており,また他に研究を担当する研究員や学生がいなかったことによる. そこで令和2年度はこれまでに得た結果に関する論文執筆とアウトリーチ活動,ならびに固体添加器具の上市活動に重点を置いた.まずこれまでの成果を日本語総説1報(有機合成化学協会誌,出版済),英語/日本語同時出版総説1報(査読中),ならびに英語論文1報(査読中)にまとめ投稿した. 株式会社TLO京都の方と一緒に,固体添加器具の良さを説明しながら地道な広報活動を行った結果,株式会社旭製作所と特許実施許諾契約の締結に至り,令和2年7月に「エアレスフィードコック」として上市に至った.これに際し,アウトリーチ活動の一環として開発経緯を記した紹介文も執筆した.これらは本研究成果の一部を世の中に役立つ,一つの形にできた点で大変有意義であったと考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,初年度から2年目にかけて,予想を上回る速度で結果が得られていたため,本年度,新型コロナウイルスの影響でペースダウンした分でちょうど帳消し程度の進捗度であると評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種後,計画通り天然物の全合成研究に取り掛かる.計画書では単発の1,2-transグリコシル化の応用計画にとどまっていたが,初年度に開発したワンポット連続グリコシル化をも利用すべく,新たな標的天然物の探索および合成ルートの立案が終わっているので,これらを併せて実行に移す.(詳細については現時点では伏せておきたい.)
全てが新型コロナウイルス感染症の状況に左右されるため,見通しを立てにくいが,何とか好転してくれることを望みつつ,薬品や研究環境を整えて実験研究開始の時期を待ちたい.
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Causes of Carryover |
令和2年度は,新型コロナウイルスの影響で実験研究を完全に停止せざるを得なかった.令和3年度以降,ワクチン接種等により新型コロナウイルス感染リスクを排除できたら,予定通り実験研究を再開し,使用する.場合によっては研究員を雇用して研究を推進する.
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Research Products
(10 results)