2022 Fiscal Year Research-status Report
機能性食品素材であるアセチルグルコサミンの抗炎症作用に関する分子メカニズム
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18K05479
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
染谷 明正 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (90167479)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長岡 功 順天堂大学, 大学院医学研究科, 教授 (60164399)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アセチルグルコサミン / グルコサミン / 抗炎症作用 / 滑膜細胞 / 炎症性シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
グルコサミン(GlcN)は炎症抑制作用を発揮することが知られている。一方、構造類似体であるN-アセチルグルコサミン(NAG)は炎症を抑制しないと考えられていた。一方、当研究課題の結果から、培養細胞を用いた実験において、NAGを長期間(3週間程度)処理すると、GlcNと同程度の炎症抑制効果(炎症サイトカイン産生低下、NF-κB p65のリン酸化抑制)が認められた。そして現在① NF-κB以外の代表的炎症シグナル分子であるERKやp38MAPKの活性化、② GlcNの細胞機能への影響に関わるタンパク糖化修飾(O-N-アセチルグルコサミン修飾、O-GlcNAc修飾)、について検討を行っている。 令和3年度の報告では、NAGは、ERKおよびp38MAPKの活性化に影響しないことを報告した。令和4年度では、実験条件を詳細に検討し直し再実験を行った。その結果、NAGはERKリン酸化を抑制する傾向があることが分かり、特に長期間(3週間程度)処理した場合、GlcNより強く抑制する結果が得られた。このようにNAGにも炎症抑制効果があり、そのためには長期の処理が必要であること、またその抑制にはNF-κB p65、やERKのリン酸化抑制を介していることが推測された。機能性食品は長期に服用されることを考えるとNAGも有効であることが考えられる。 現在、O-GlcNAc修飾がNAGの炎症抑制効果に関連しているかについて、Western blottingや質量分析法での検討を継続している。一方、NAGの遺伝子発現に対する効果も検討するため、全RNAシーケンスの実験も検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
これまでの実験結果の信頼性を確認するため、詳細な実験条件の検討と再確認を行っていた。そのため基礎実験の部分で時間を要している。またO-GlcNAc修飾の実験においては、特異性およびアフィニティーの高い抗体がないため、複数の抗体を使って比較しながら実験を進めなくてはならず時間を要している。そのためマウスを使ったin vivo実験がまだであり、実験に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度の研究を引き続き進める。すなわちNAGの炎症抑制に関わるシグナル伝達経路の確認実験を進める。これまでNAGならびにGlcN処理した細胞から、糖化修飾タンパク質を網羅的に解析しようと試みてきた。今後は、NAGならびにGlcNの遺伝子発現に対する影響を網羅的に調べることを視野に入れ、これまでのNF-κBならびにERKシグナルに対する阻害効果と合わせて総合的にNAGの抗炎症作用の分子メカニズムを探る予定である。
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Causes of Carryover |
理由: NAGの炎症シグナリングへの影響ならびにNAGのターゲット分子の同定実験が進行中のため、これら実験に必要な試薬ならびに分析料金、そしてin vivo実験で使用する動物購入経費が次年度に持ち越されることとなった。 使用計画:抗体、阻害剤、発現プラスミド、遺伝子導入のための試薬の購入、また各種分析費用(質量分析、RNAシーケンスを予定)のための経費、そしてマウスの購入と飼育に使用予定である。
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